米長期金利上昇でサプライズのドル安に。 「日銀騒動」はポジション調整の口実か
2018-01-12
米ドル/円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
その背景には、米長期金利の下落ではなく、その真逆の上昇があったのも、いささかサプライズであった。
その発端は2018年年明け早々の、日銀による超長期国債買い入れの減額だった。黒田総裁の任期満了が近づいていることで、市場には日銀がテーパリング、すなわち緩和政策の出口戦略を打ち出したのでは…という思惑が広がり、これが円買いにつながったわけだ。
その上、中国当局が米国債投資見直しとの報道も、米ドル売りに拍車をかけた。
日銀のテーパリング疑惑が浮上してきたから円を買い戻す、といった市場の反応パターンは理解されやすいだろう。
主要中央銀行の中で、日銀は唯一、緩和政策を維持し、昨年(2017年)はほとんど修正の動きがなかったから、「今年(2018年)こそ修正してくるか」といった思惑が支配的だ。ゆえに、昨年(2017年)11月に黒田氏が「リバーサル・レート」理論を紹介した時と同じく、市場関係者は日銀の軌道修正がついに始まったと疑い、いっせいに円の買戻しを図ったのだ。
■日銀は独断でテーパリングを行うことはできない!? 市場の疑いはまったく根拠がないとは言えない。なにしろ、日銀がこのようなシグナルを発してしまったこと自体が「誤り」であった可能性は大きいと思う。
前述のように、日銀のみ取り残されている時期に、昨年(2017年)の黒田さんの発言と同様、日銀が「ステルステーパリング」を行い、事実上の引き締めに着手したと投資家たちが受け止めても仕方がないだろう。
一方、唐突な印象はあるものの、総じてテクニカル調整の範囲に留まり、日銀政策自体の修正にはほど遠いという指摘も多い。
公的年金改革など政策面にしても、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的機関にしても、日銀政策に依存している状況からみると、物価目標(2%)を正式に放棄しない限り、日銀が政府の意向を汲まずにテーパリングを行う余地は少ないと思われる。
もちろん、中央銀行は独立性を有し、法律上、政府の意向を忖度する必要はないが、黒田体制が安倍政権とセットになって登場してきた経緯から考え、そして、肝心の物価目標が未達成のうちに、たとえステルスだとしても日銀がまったくの独断でテーパリングを行えるかと聞かれると、答は明らかにノーだと思う。少なくとも黒田さんが引退するまでは、基本的にはないとみる。
市場の注目を集める日銀の出口戦略。しかし、黒田総裁が引退するまでは、日銀が独断で秘かに出口に向かうといったことはない…のだろうか。 (C)Bloomberg/Getty Images
■一時的にせよ、大幅な円高を招いたこと自体は日銀のミス ただし、長期金利の低下や市場の「日銀頼み」を牽制する目的なら、今回の国債オペ減額も必ずしも理解できないとはいえない。しかし、事前に十分なコミュニケーションをとらずに行われた減額に市場が動揺し、一時的にせよ、大幅な円高を招いたのは事実。日銀としては「不本意」だったとしても、これは明らかに日銀がミスを犯したと言える。
というのは、114~115円といった円安の「壁」に直面し、円安の基調が定着していないうちに政策を変えることは、金利市場や為替相場に波乱をもたらすと容易に推測されるはずだからだ。
もっとも、日銀のオペ減額後、超長期国債利回りの…