【2022年の見通し】円は2022年も引き続き、 最弱の通貨として売られやすい! ただし、 米ドル/円は123円程度が上値の限界か
2021-12-24
とはいえ、昨年(2020年)年末の筆者の予想、特に米ドル/円に関する予測は一番合っていたようで、円安は本物、また本流であることが逆に証明されているのではないかと思う。
【参考記事】●2021年こそ「新たな円安時代」の幕開けか。米ドル/円をめぐる2つのシナリオとは?(陳満咲杜、2020年12月25日)
なにしろ、昨年(2020年)年末に筆者が提示した米ドル/円の上値ターゲット(米ドル高・円安)が、多くのアナリストのうち一番高かったようで、今年(2021年)の為替市場は総じて、多くの市場参加者にとって「サプライズ」であったと言える。
サプライズであるほど円安の進行が確認されたわけで、来年(2022年)は円安の流れが一段と進行しやすいかと推測される。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
案の定、昨年(2020年)年末にて円高傾向と予測していた多くの方が、来年(2022年)の見通しを一変させ、円安の方にシフトしてきた。
米ドル/円の上値ターゲットに関して、120円の節目はもちろん、125円台、さらに130円台の予測さえ出ているなか、あくまで「経験則&カン」で言えば、来年(2022年)も円安傾向は保つものの、市場関係者が望むほどの上値打診は容易ではないかもしれない。
なぜなら、相場は常に大衆(専門家も同じ)の意表を突く習性を有するから、メイントレンドの予測ができたとしても、なかなかその変動率を事前には予測できないものだからだ。
もっとも、考えてみれば当然と言えば当然である。メイントレンドを予測できた上、変動率も事前に把握できれば、相場における不確実性がなくなり、相場自体が成り立たなくなる。
したがって、注意深く市場におけるコンセンサスの変化をフォローし、またそれと適切な距離を置くことも個人投資家にとって必要不可欠なスタンスだと思う。
円安トレンドが一段と加速するのはむしろこれから しかし、メイントレンドを徹底してフォローするスタンスは維持すべきだと思う。
市場のコンセンサスはどうであれ、トレンドありか、それともトレンドレスかはもっとも重要な問題である。為替市場におけるメイントレンドの流れは、往々にして市場参加者の想定をはるかに超える雄大なものなので、安易に否定されない。
この意味合いにおいて、円安トレンドが一段と加速するのはむしろこれからだと思う。
今年(2021年)の市場におけるもっとも鮮明な基調と言えば、円安というほかあるまい。繰り返し指摘してきたように、米ドル/円における2021年年初来の上昇の背景には、2020年のコロナショック後の安値を割り込めなかったことがあった。
米ドル/円 週足(出所:TradingView)
対象的に、ドルインデックスは同ショック直後の安値を大きく割り込んでいた。これらのことからも、今年(2021年)大半の期間において、円独歩安の現象が起きていたことがわかるだろう。
ドルインデックス 週足(出所:TradingView)
こういったメイン基調は、2022年も継続されよう。なにしろ、ドルインデックスでさえ、2021年年初来の安値から反騰してきたから、米ドル/円のリードする役割は低下してきたとはいえ、基本的に米ドル/円は米ドル全体の強さとリンクする基調を保てる。
金融緩和局面においては、米ドル全体が売り込まれやすいが、緩和政策の縮小や利上げ観測が高まると、米ドルショートポジションの買い戻しが行われやすく、目先のドルインデックスの反騰は、なお途中だと思う。
テーパリング終了や利上げ時期に関する示唆を行ったFRB(米連邦準備制度理事会)は、為替市場に一番大きなインパクトを与える中央銀行であり、政策を実行すれば、少なくとも短期金利は一段と上昇しやすい。
米ドル全体にしても、米ドル/円にしても、米短期金利の上昇が避けらないなら、積極的、また継続的に売りを仕掛けられる理由が見つからない。
米ドル/円は早晩115円の大台の上に定着、また115円~120円といった変動レンジを形成、場合によっては一時122~123円といった上値トライもあり得るだろう。円は最弱の外貨として、2022年も売られやすいことは変わらないと思う。
米ドル/円 日足(出所:TradingView)
米金利上昇なら、素直な米ドル買い・円売りが継続される 円高懸念の多くは、円の実効レートがすでに50年ぶりの安値圏に沈んできたことを根拠にしている模様だ。
また、円売りポジションの積み上げで、揺り戻しが生じやすい、といった相場内部の均衡に由来する見方も根強い。
年末年始における薄商いの中、一時的な円の急伸があってもおかしくないが、継続的な円高局面に逆戻りするようなトレンドはあり得ないだろう。
なぜなら、昨年(2020年)のコロナショックが究極の試金石であったからだ。米国株安でも円買いは主導的に展開していなかった。円は伝統的な役割、すなわちリスク回避先としては特に見なされずにいたのだった。
「リスクオフの円高」という従来の方程式の無効が確認された以上、円実効レートの一段の低下が十分あり得る上、単純に円売りポジションの積み上げがあったからといって、必ずしも崩れるとは限らないと言える。
つまるところ、円安時代へ加速する過程において、従来の物差しが効かなくなる可能性が大きく、従来のロジックにこだわりすぎると、これからの方向を見誤りやすい。
「米金利上昇なら、素直な米ドル買い・円売りが継続される」。相場は実にこのシンプルなテーマで突っ走るかと思う。
来年(2022年)のコロナ禍の状況次第で、また米インフレの状況次第で、FRBの路線修正があってもおかしくないが、路線変更は基本的になかろう。
路線変更がないなら、米金利の上昇も既定路線であり、途中の振れ幅が多少あっても、米ドル高・円安の流れは変わらないはずだ。
米ドル/円が125円を超えていくには、米金利だけでは材料不足 半面、筆者は過激な上値ターゲット(125円以上)とも距離をおきたいと思う。
もっとも気になるのは、米利上げ過程における米国株の動向である。米国株は一本調子な上昇を想定しにくい。
そして、米国株の波乱次第で、米金利の上昇も紆余曲折となる可能性があり、結局、円安の流れは継続されるとしても、ボラティリティ(変動率)の拡大が来年(2022年)の米ドル/円の高値を制限してこよう。
そもそも2015年高値は125円止まりだったから、同高値を再度打診、また、超えていくのは米利上げのみでは材料不足、また、時期尚早であろう。
さらに、米ドル全体の状況も肝心である。米ドル/円におけるテーマがシンプルであっても、米ドル全体となれば話は別だと思う。
テーパリングはあくまで緩和策の縮小であり、また、利上げが開始されても、政策金利が金利の中立水準とされる2.5%以下であれば、なお緩和の段階と言える。
よって、リスクオンなら実は投資が活発化して、米ドルから円以外の外貨(特に資源国通貨)に資金が流れやすいから、米ドル高一辺倒ではなく、場合によっては対円以外で大きな波乱があっても、想定内と言える。
その分、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円安効果が米ドル/円を支える一方、米ドル全体の弱含みがあれば、米ドル/円のリードが続くかどうかは実に不明瞭だとみる。
米ドル/円の購買力平価から推測すると、米ドル/円の上限は123円程度ではないか 最後に、少し理論的な話となるが、国際通貨研究所の資料によると、現時点の消費者物価ベースにおける米ドル/円の購買力平価は約113円程度である。
過去に遡ってみて、実勢相場が同購買力平価の上に大きく離れたことはなかった。
米ドル/円購買力平価と実勢相場(クリックで拡大)(出所:国際通貨研究所)
本格的な円安時代に突入し、これから同購買力平価の上に定着、また大幅に離れていくことが想定できないことはないが、たちまちそうなることはなかろう。
ゆえに、同購買力平価より10円程度の乖離が限界とすると、来年(2022年)の米ドル高・円安の限度は123円程度ではないかと推測する。さらなる上値追いには慎重なスタンスを取りたい。
米ドル/円の話ばかりで、そのほかの話は来年(2022年)に持ち越しとなるが、また来年もご愛読のほどお願いできれば幸いである。それでは、皆様、よいクリスマス&よいお年を!