新しいパブリックブロックチェーンやサイドチェーンが続々とEVM互換にする理由
新興レイヤー1もサイドチェーンもEVM互換がデフォルトに
現在、多くのパブリックブロックチェーンがEVM互換にシフトしています。最近台頭しているパブリックブロックチェーン、例えばBinance Smart Chain(BSC)やHuobi Eco Chain(ECO)は全てEVM互換です。
新しいパブリックブロックチェーンはEVM互換が多くなっており、レイヤー1に限らずレイヤー2(Optimistic Rollupなど)やサイドチェーン(Polygonなど)にも同様のトレンドが押し寄せています。
EVMとはイーサリアム(Ethereum)のバーチャルマシンで、イーサリアムの状態遷移はEVMによって処理されています。EVMはスタックベースの仮想マシンでバイトコードによって処理が実行されます。スマートコントラクトと呼ばれるプログラムはソリディティ(Solidity)やバイパー(Vyper)
などの高級言語で記述されてバイトコードにコンパイルされ、EVMで実行されます。
このEVMはもともとイーサリアムでプログラムコードを実行するために開発された仮想マシンですが、最近ではさまざまなブロックチェーンがEVM互換性を持たせています。EVM互換性を持たせることによってイーサリアム上のアプリケーションを移植することを容易にしたり、新しい開発言語を習得しなくてもそのブロックチェーン上で開発できるようにしています。
これによってマルチチェーンというトレンドが生まれていることは前回のコラムで解説しました。
関連:DAppsやDeFiの新たなトレンド「マルチチェーン展開」とは?
新しいパブリックブロックチェーンがEVM互換にするメリット
一般的に指摘されるイーサリアム以外のブロックチェーンがEVM互換を持つことによるメリットは、以下のように整理されます。
①イーサリアムの開発ライブラリを全て利用できる
EVM互換を持つブロックチェーンは、イーサリアムの開発ライブラリをすべて利用できます。もともとイーサリアムのアプリケーション開発をしていた場合は、移植が容易です。
②イーサリアムの開発ツールを全て利用できる
イーサリアムには、さまざまな開発ツールや周辺ツールがオープンソースで存在します。それはエディターやブロックエクスプローラー、web3.js など多岐にわたります。他のブロックチェーンはEVM互換にすることでこれらを流用できます。
④イーサリアムで慣れたユーザーのオンボーディングコストが低い
周辺ツールがそろっていることは開発者だけでなく、ユーザーのオンボーディングコストも低くします。例えばBinance Smart Chainは、イーサリアムのクライアントの大部分をフォークして開発されたブロックチェーンですが、ユーザーは普段イーサリアム用に使っているMetaMaskから「ネットワークの追加」を選択してBinance Smart Chainを利用できます。新しいウォレットなどをインストールする必要は一切ないのです。
EVM互換のトレンドは覆らないのか?
EVMにも問題点がいくつかあります。例えばインストラクションの計算にガスの制約がかかることから、完了できる計算の数に制限があること、専用のプログラミング言語を必要とする設計や形式検証がしにくいことなどが挙げられます。
不完全さが指摘されていながらもEVMが主流になっているのは、メリットが上回っていたからでしょう。形式検証が困難であると指摘したところで、イーサリアムでは5年の間、実際にメインネットでさまざまな金融取引を処理してきた実績があり、そのコードベースは一定の信頼を獲得しています。
例えばDeFi(分散型金融)のカテゴリでは、Staking(Synthetixのコード)や貸借市場(Compoundのコード)、AMM(Uniswapのコード)がさまざまなプロジェクトに利用されています。これらをライブラリとして利用するプロジェクトはイーサリアム上のプロジェクトはもちろん、EVM互換を持つ他のブロックチェーン上のプロジェクトも多数存在します。
これらEVMを前提にしたプロジェクトのライブラリへの信頼は、開発エコシステムの蓄積だけでなくハッキングなどの攻撃経験も踏まえたものであり、それを別のバーチャルマシンや開発言語で再度繰り返すことには業界全体の力学が働きません。
結果として今ではブロックチェーンアプリケーション開発はEVMを前提とした開発環境が支配的になっています。この流れは一朝一夕には変化することはないでしょう。
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参照元:CoinChoice