シンガポール中央銀行「ブロックチェーン決済ネットワーク」商業展開の準備完了
シンガポールの中央銀行にあたる「シンガポール金融管理局(MAS)」は2020年7月13日に、MASが40以上の企業・金融機関と協力して取り組んできた「Project Ubin(プロジェクト・ウビン)」の最終フェーズが完了し、ブロックチェーンを基盤とした決済ネットワークを商業展開する準備が整ったことを明らかにしました。
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プロジェクト・ウビン「最終段階」を完了
シンガポール金融管理局(MAS)は2016年に、ブロックチェーン技術や分散型台帳技術(DLT)を活用して金融業界の課題を解決することを目的としたプロジェクト「Project Ubin(プロジェクト・ウビン)」を開始しました。
Project Ubin(プロジェクト・ウビン)は合計5つの段階に分けてプロジェクトが進められており、「シンガポールドルのトークン化、即時グロス決済(RTGS)、Delivery Versus Payment(DvP)、Payment Versus Payment(PVP)、幅広いエコシステムとのコラボレーション」などに関する実証実験や調査などが行われてきました。
今回の発表では、これらのプロジェクトの最終段階にあたる「第5段階目」が成功に終わり、商業展開に向けた準備が整ったことが報告されています。
多通貨決済ネットワークのプロトタイプを共同開発
プロジェクトの最終段階にあたる「第5段階目」では、シンガポールの国営投資法人「Temasek(テマセク)」や米国の大手金融機関「JP Morgan(JPモルガン)」と共同でプロトタイプの”多通貨決済ネットワーク”が開発されています。
この多通貨決済ネットワークはJPモルガンのブロックチェーンである「Quorum(クォーラム)」を基盤としたものであり、JPモルガンの銀行間情報ネットワーク「Interbank Information Network(IIN)」や同社の独自デジタル通貨である「JPMコイン」が活用されています。公式発表では、この多通貨決済ネットワークは『同じネットワーク上の異なる通貨で支払いを実行でき、従来の国際送金ネットワークよりも高速かつ安価な取引が可能』だと報告されています。
決済ネットワークの商用アプリケーションの使用例としては「複数通貨を用いた国際送金・外貨両替・外貨建て証券の決済・他のブロックチェーンプラットフォームとの統合」などが挙げられており、『JP Morgan・Temasekと共同開発された決済ネットワークプロトタイプは、他の中央銀行や金融業界とのコラボレーションを促進し、次世代のクロスボーダー決済インフラストラクチャを開発するためのテストネットワークとして機能する』と説明されています。
MASのフィンテック部門最高責任者であるSopnendu Mohanty氏によると、5段階に分けて実施されてきた実験は全て成功したとのことで、これからは商業利用を開始する予定だと説明されています。MASとテマセクは、さらなる産業開発を促進するために、プロトタイプネットワークの技術仕様の一部を一般公開しているとのことです。
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