仮想通貨市場に何が起きた?2025年2月の急落要因・回復シナリオを考察

仮想通貨市場に何が起きた?2025年2月の急落要因と回復シナリオを考察(What happened to the crypto market? Analyzing the causes of the February 2025 crash and recovery scenarios)

2025年2月、仮想通貨市場が大幅に下落し、ビットコイン(BTC)は一時92,000ドルを割り込みました。市場全体の時価総額は約13%減少し、主要なアルトコインも軒並み下落しています。

経済政策の不透明感や規制強化への懸念、大口投資家(クジラ)の売り圧力、さらにはBybitのハッキング事件などが影響していると見られています。

この記事では、仮想通貨市場の急落要因を詳しく解説し、専門家の見解や今後の回復シナリオについても紹介します。

仮想通貨市場全体の状況:史上最高値から一転、急落へ

仮想通貨市場暴落の画像

2024年後半から2025年初頭にかけて仮想通貨市場は記録的な強気相場となり、ビットコイン価格は2024年12月に初めて10万ドル(約1,600万円)を突破しました​。2025年1月20日には1BTCあたり109,114ドル(約1,700万円)の史上最高値を記録しています​。

しかし、2025年2月に入り状況は一変しました。2月中旬以降、ビットコイン価格は急落し、一時92,000ドル(約1,400万円)を割り込む場面も見られました​。市場全体の時価総額も、2月初旬の3.6兆ドル(約545兆円)から2月下旬には3.2兆ドル(約476兆円)へと約13%減少しています​。

アルトコインも同様に軒並み下落し、イーサリアム(ETH)は同期間に3,220ドル(約48万円)から2,810ドル(約42万円)へ約13%下落するなど、市場全体が調整局面に入りました​。

今回、なぜ仮想通貨市場がこれほど急激に下落したのか、その主な要因を探っていきます。

2025年2月:仮想通貨暴落の主な原因

暴落要因の画像

今回の暴落には複数の要因が重なっているとみられており、代表的なものを順に解説します。

米国経済指標や金融政策の影響(景気・利上げ動向)

最大の要因の1つが「米国の経済政策と景気動向」と見られています。2025年1月に発足したトランプ政権は、就任直後から積極的な貿易政策を打ち出しました。

メキシコやカナダからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の関税を課すと発表したことで、市場には不透明感が広がりを見せています​。表向きは国内産業保護や違法薬物流入阻止が目的とされていますが、関税強化は輸入物価の上昇を招き米国インフレ再燃の懸念を高めました​。

さらにトランプ大統領はFRB(米連邦準備制度)に対し利下げ圧力をかけており、市場への資金流入期待とインフレ長期化懸念が交錯する状況となっています​。

このような米国経済政策の不透明感から投資家はリスク回避姿勢を強め、株式市場や為替市場が不安定化しました。実際、2月中旬には米ナスダック総合指数がハイテク株の急落に牽引されて3%下落し、ビットコインも連動して急落しています​。

経済指標の悪化や金融引き締め観測は仮想通貨を含むリスク資産全般にマイナス材料となり得るため、ビットコイン市場も例外ではありません。過去にも、米金融引き締め開始による市場冷え込みでビットコインが下落した例もあります​。

今回も例外ではなく、米国景気減速懸念と金融政策の不透明さが仮想通貨市場全体の売り材料となりました。​実際ビットコインは、先述した史上高値から約10~15%下落し91,000ドル台まで価格を下げました​。

大口投資家(クジラ)の売り動向

マーケットでは「クジラ」と呼ばれるビットコインの大口保有者の動きも価格に大きな影響を与えます。今回の暴落局面でも、一部では大口投資家が利益確定の売却を行ったとの観測があり、市場全体の下げを加速させました。

2021年5月12日、テスラ社のイーロン・マスクCEOが「テスラ車の購入にビットコインを使用することを停止する」とツイートした際、市場には「テスラが保有するビットコイン(当時1,600億円相当)を売却するのではないか」という懸念が広がりました​。

これを受けて多くの投資家がパニック売りを行い、ビットコイン価格は急落しています​。このように著名企業や投資家による発言・売却示唆が引き金となり、クジラの存在は市場心理に大きな波を起こします。

今回のケースでも、ビットコインが100,000ドルの大台を割り込んだ局面で一部クジラが売りを出したとの指摘があります。その結果、小口投資家の不安が増幅され連鎖的な売りを招きました。

実際、1月末から2月初旬にかけてBTC価格が下落する中、小口投資家は売りを進める一方でクジラは買い増しに転じたというデータもあり​、マーケットでは弱気派(売り手)と強気派(買い手)の攻防が起きていたことが報告されています。

結果的に、一部クジラの売却行動が暴落の一因となり得た一方、後述するように他のクジラが暴落を買い場と捉えていた動きも見られました。このように大口投資家の動向が市場に与えるインパクトは非常に大きく、暴落時には「誰が売っているのか、買っているのか」が注目されています。

ハッキングなどセキュリティリスク

仮想通貨特有のリスク要因として見逃せないのが、ハッキング事件などセキュリティ上の不安です。今回の暴落の引き金と見られている「大手海外取引所Bybit(バイビット)のハッキング事件」が発生しました​。2025年2月22日未明に起きたこの事件では、約401,000 ETH(2,100億円相当)もの仮想通貨が流出し、単一のハッキング被害額として過去最大となりました​。

調査会社や専門家たちによれば、過去に数々の仮想通貨ハッキングを行ってきた北朝鮮系ハッカー集団「ラザルスグループ」の犯行である可能性が濃厚であることが示唆されています。。

このニュースが市場に伝わると、投資家は一斉にリスクオフ(資産引き上げ)の行動を取ります。実際Bybitから巨額の資産流出が報じられた直後、ビットコイン価格は約95,000ドル台まで急落し​、主要なアルトコインも軒並み売られるパニック相場となりました。

今回のハッキングは規模が非常に大きかったものの、幸いにも取引所間の連携による迅速な対応が功を奏した形となりました。Binance(バイナンス)Bitget(ビットゲット)といった他の大手取引所が合計約10万ETHの緊急支援を提供し、Bybitの出金停止など最悪の事態を防ぎました​。保全され、流出分も外部支援で穴埋めされました。

Bybit側も攻撃から10時間以内に約35万件もの出金リクエストに対処し、2月24日時点で入出金機能は通常通りに回復していることが報告されています​。この迅速な対応によってユーザー資産は保全され、流出分も外部支援で穴埋めされました。

とはいえ「大手取引所ですらハッキングされるのか」という不信感は市場に大きく影を落としました​。仮想通貨はデジタル資産であり、その安全性への信用が損なわれると価格に直結します。

2014年2月、当時世界最大の取引所がハッキング被害で破綻したマウントゴックス事件ではビットコイン価格が長期低迷しましたが​、今回も同様にセキュリティリスクへの懸念が暴落の直接的な引き金となりました。

その他の市場要因(連鎖的な影響・投機動向)

米国経済の不透明感、規制強化への懸念、クジラの売り、史上最大規模のハッキング、そして連鎖的な市場要因が重なり合い、2025年2月の仮想通貨市場は急落に見舞われました。一言でいえば「悪材料のオンパレード」でした。

それらに加えて以下のような複合的な市場要因が暴落に拍車をかけた可能性も指摘されています。

他の仮想通貨・関連資産の連鎖影響

特定のコインや関連市場のトラブルが波及するケースです。例えば2022年5月のテラ(LUNA)/UST崩壊では、ステーブルコイン「UST」の信用失墜が全体の信用不安につながり、市場全体が大きく動揺しました​。

今回も、BybitのETH流出を受けてETH価格が一時8%急落し、アルトコイン全般が連鎖安となりました​。

投機的な過熱と調整

仮想通貨市場では思惑買いによる急騰後の反動もしばしば起こります。事実、ビットコインは2024年末の10万ドル到達という好材料を受けて投機的な買いが過熱していました。そのため「材料出尽くし」による利益確定売りが出やすい状況だったとも言えます​。

2024年末〜2025年初頭には、ビットコインに関連する米国の動きや半減期といった好材料が相次ぎましたが、噂で買われ事実で売られる典型で、実際に承認・イベント実現後に一時的な調整が入っています​。今回の暴落も、その延長線上で過熱感の解消という面があったとの見方もされています。

株式・為替市場からの波及

前述の通り株式市場の下落は仮想通貨市場に伝播することがあります。新型コロナ変異株ニュースで株・為替が急落した際にビットコインも急落した2021年11月の例があるように​、2025年2月もAI業界の動揺(DeepSeek登場によるエヌビディア株急落)がリスクオフムードを強めました​。

つまり株や不動産などの伝統市場と仮想通貨市場の連動性も下落圧力の一因となった可能性もあります。

暴落に対する専門家や著名投資家の見解

専門家や著名投資家の見解の画像

では、こうした状況に対して専門家たちはどのように見ているのでしょうか?次に著名投資家や専門家の発言を追ってみます。市場が混乱する中、各国の専門家や有名投資家たちは様々な見解を示しています。

CryptoQuant CEO:一時的な調整後に強気相場復帰の可能性

ブロックチェーン分析企業「CryptoQuant」のCEOであるキ・ヨンジュ氏は、市場の急落にもかかわらず強気のスタンスを崩していません。

同氏は「強気相場が再開する前にビットコイン価格は77,000ドルまで下落しうる」と予測しつつも、あくまで一時的な調整局面との見方を示しました​。実際、今回の急落でもビットコインはかろうじて10万ドルを割り込んだ水準で下げ止まっており、主要なテクニカル指標には反発の可能性も示唆されています​。

キー・ヨンジュ氏の分析は「さらなる下押しの後に大勢としての上昇トレンドは維持される」というもので、悲観一辺倒ではありません。

マイケル・セイラー氏:長期的な楽観論を維持

ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社の共同創業者であり著名なビットコイン支持者であるマイケル・セイラー氏もまた、この局面において前向きな見解を述べています。

2月下旬に開催されたCPAC 2025(米保守政治活動会議)の場で、セイラー氏は「ビットコインが企業の財務戦略や個人の経済的自立に与える可能性」を強調しました​。

同氏率いるストラテジー社は継続的にビットコインを購入・保有していることで知られますが、今回の暴落でもプロファイル画像をビットコイン関連に変更するなど引き続き強い信念を示しています。セイラー氏は短期的価格よりもビットコインの長期的価値に重きを置いており「この程度の調整は想定内」と捉えているようです。

米投資会社VanEckの予測:調整後に過去最高値更新も

米国の大手資産運用会社VanEck(ヴァンエック)は、今年の相場見通しとして「ビットコインは一回目のピーク後に30%調整するが、秋には主要トークンが勢いを取り戻し年末までに過去最高値を奪回する可能性」を指摘しています​。

今回の暴落がまさに「30%近い調整局面」に該当するとすれば、この後に再度上昇トレンドに乗るシナリオも十分考えられるということになります。ヴァンエックは過去のサイクルやマクロ環境を踏まえ、2025年後半にかけて強気相場が再燃するとの見方を示しています。

ロバート・キヨサキ氏の予測:復活は大規模なものになる

「金持ち父さん 貧乏父さん」の著者であり、投資家としても知られるロバート・キヨサキ氏は2025年2月21日に、自身のX(旧Twitter)の投稿で「市場崩壊が進む中で、ビットコインが最も早く回復し高値を更新するだろう」との見解を示しています。

同氏は、これまでにビットコインや金、銀を推奨していますが、価格が下落すれば「さらに買い増しをする」とも述べ、強気な姿勢を示し続けています。

市場回復のシナリオと今後の見通し

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「ビットコイン価格はこの先どうなるのか」「ビットコインの下落はいつまで続くのか」これは仮想通貨ホルダー全員が抱く疑問です。

では実際、今後市場はどのように動いていく可能性があるのでしょうか?専門家の分析や過去の傾向をもとにいくつかの回復シナリオを紹介していきます。

ファンダメンタルズ改善による回復期待

まず、ファンダメンタルズ(市場の基盤)要因の改善が回復を後押しするシナリオです。具体的には以下のようなポイントが注目されています。

新規資金の流入と需要拡大

暴落を受けたことで、割安感から新規資金が流入する可能性があります。前述のようにクジラや機関投資家が下落局面でビットコインを買い増しているデータも示されています​。

また米国のビットコインをはじめとする仮想通貨ETFが承認・稼働したことで、大口マネーが参入しやすい環境が整いました。実際、ビットコインETFには暴落中にも大規模な資金流入が確認されており​、このトレンドが続けば価格の底支え・反転材料となり得ると見られています。

景気・金融政策の転換

米FRBがインフレ沈静化を確認し将来的な利下げに転じれば、市場心理は一気に好転する可能性もあります。報道によればFRBは2025年に数回の利下げを示唆しており、その発表を受けてビットコインが下げ止まる場面もありました​。

今後インフレ指標が改善し、金融引き締めサイクルが終わりに近づけば、再び仮想通貨市場に資金が戻りやすくなると期待されています。

業界全体での支援と信頼回復

Bybitのハッキング事件では他取引所が協力して緊急支援を行い、市場の信用不安拡大を防ぎました​。このように業界全体でセキュリティ強化とユーザー保護に努める姿勢が見られることは、長期的に投資家の信頼回復につながります。

また各取引所は証拠金の透明化や保険基金の拡充など再発防止策を講じ始めています。セキュリティ面の安心感が高まれば、暴落で離れた個人投資家が再び市場に戻ってくる可能性も高まると見られています。

過去の相場サイクルに基づく回復シナリオ

ビットコインをはじめ仮想通貨市場には「独特のサイクル(循環)」が存在すると言われています。過去の暴落とその後の回復を分析すると、いくつか共通点が浮かび上がります。

半減期サイクル

ビットコインは約4年ごとにマイニング報酬が半減する「半減期」を迎え、その前後で大きな価格変動サイクルを形成してきました。2024年4月に4度目の半減期を終えた後、2024年末にかけて急騰し10万ドル超えのピークを付けた流れは、2017年や2021年のサイクルと類似しています​。

これまでの傾向では、半減期直後に一度調整局面(暴落)があり、その後再度上昇トレンドに戻って次の頂点をつけることが多く見られました。今回も半減期後の「中間調整」と捉えれば、過去サイクルになぞらえて数カ月の停滞・調整を経た後に再び上昇に転じるシナリオが考えられます。

2025年後半の強気材料

前述のヴァンエック社の予測にもあった通り、2025年秋以降にマーケットが回復し年末に最高値更新というシナリオは十分あり得ます​。実際、ビットコイン市場は過去に春先~夏に調整し秋に再度上昇する動きを度々示してきました(2013年や2021年など)。

2025年についても、米大統領選挙イヤーの翌年ということで政策的不透明感が徐々に薄れ、新興国での採用拡大や企業のクリプト参入といったポジティブニュースが後半に出やすいとの見方もあります​。

香港では2024年にビットコイン現物ETFが上場し話題となりましたが、そのような新規マーケットの誕生が2025年も継続すれば需要拡大につながります。

歴史的な強さ

ビットコインはこれまで何度も深刻な暴落を経験しながら、その度に過去の高値を上回る復活を遂げてきました。2018年の長期弱気相場、2020年3月のコロナショック、2022年のFTXショック​など、いずれの危機においても数ヶ月~1年程度で価格を回復させ、新たな成長局面に入っています。

今回の暴落も歴史的視点から見れば「よくある調整」に過ぎない可能性があります。過去の教訓からは、悲観のピークで将来の強気相場が芽吹いていることが多く示されています。

仮想通貨業界の今後の動きと期待されるポイント

最後に、仮想通貨業界全体の今後の展開にも触れておきます。市場回復には外的要因だけでなく、業界内部の発展も重要なポイントとなります。

技術革新とユースケース拡大

ブロックチェーン技術や仮想通貨の実用性がさらに高まれば、価格は自然と押し上げられます。例えばイーサリアムは2024年に大型アップグレードを完了し手数料問題が改善したことで、新たな資金流入が期待されています。

DeFi(分散型金融)NFTなどのエコシステムも成熟が進めば「仮想通貨=投機資産」から「実需のある資産」へと評価が変わり、安定した成長が見込める可能性があります。

企業・政府の参入

ストラテジー社のようにビットコインを準備資産として保有する企業が増えたり、国家が採用を進めたりする動きが広がれば、需給面での追い風となります。

実際、米国政府内ではビットコインの戦略的備蓄(国家準備金)を検討する議論も進んでいるとの報道があります​。仮に主要国が公式にビットコインを保有・利用するような流れになれば、市場規模は飛躍的に拡大していく可能性があります。

市場インフラの整備

取引所の規制遵守やカストディ(資産保管)サービスの充実、セキュリティの強化など、安心して参加できる市場環境づくりも回復には不可欠です。2025年は各国で仮想通貨関連法の整備が進む見込みで、規制の明確化はかえって機関投資家の参入意欲を高めると期待されています​。

悪質なプラットフォームが淘汰され信頼性の高い企業が台頭することで、マーケットはより健全に成長していくと見られています。

まとめ

以上を総合すると、2025年2月のビットコイン暴落は「一時的な調整局面」であり、適切なファンダメンタル改善と時間の経過によって回復するシナリオとの見方ができるのかもしれません。

仮想通貨市場では歴史的に「上がれば下がる」はつきものです。その代わり、下落を乗り越えるたびに市場は成長し続けてきたという事実もあります。

投資判断は慎重に行う必要がありますが、過度に恐れるのではなく正確な情報に基づいて冷静に状況を見極めることが大切です。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.59円)

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Souce:VanEckレポート
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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