【前編】「NFTで変わる不動産体験」NOT A HOTELが描く新しい別荘の形とは

「お客様の8割が初めてNFTを購入していて、しかも初めてのNFTが100万円超えですよ。すごいことですよね!」

NOT A HOTEL株式会社のWeb3コミュニティマネージャー、岡本伊津美氏は熱を帯びた瞳を向けてそう語りました。

2020年4月創業のNOT A HOTEL株式会社は、高級別荘の販売とNFTを活用した宿泊サービスを展開する企業です。2022年に始動したNFTプロジェクトは、不動産業界における革新的なNFTの活用事例として注目を集めています。

岡本 伊津美(おかもと いずみ) NOT A HOTEL株式会社 Web3コミュニティマネージャー
専修大学文学部卒業後、外食やFintech、不動産業界で幅広く活躍。
暗号資産バブル期にbitFlyerで金融庁検査、改善命令プロジェクトを担当。
BINARYSTAR株式会社では創業メンバーとして管理部門を構築
株式会社サクラエクスチェンジビットコイン取締役COOとして企業買収やPMIプロジェクトを牽引
現在はNOT A HOTEL株式会社でNFT事業やインサイドセールス、カスタマーサービスを統括

小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役
2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。
「NFTビジネス活用事例100連発」著者
ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得

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NOT A HOTELのビジネスモデルとは?

小林:本日は、NOT A HOTEL株式会社Web3コミュニティマネージャーの岡本伊津美さんにお越しいただいております。岡本さんはNOT A HOTELにおいてWeb3プロジェクト全般を統括されている方です。

RWA(現実資産)で日本初となるNOT A HOTEL COINのIEOも公表されていますが、そのあたりも含めていろいろとお話を伺っていきたいと思います。
まずは岡本さんご自身について、自己紹介をお願いします。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:NOT A HOTELの岡本です。年齢は今年34歳になります。

特段の役職はないのですが、NOT A HOTEL NFTを2022年にリリースしまして、今はNAC(NOT A HOTEL COIN)とNOT A HOTEL DAOというサービスのコミュニティマネージャーを務めております。

小林:Web3全般の業務は、2022年から携わられているのですか。

岡本:そうですね。NOT A HOTELの立ち上げの頃からチームに加わりました。正確に言うと、リリース直後に入りまして、NFTの販売回りのオペレーション設計や、メールのテンプレート作成などを行っていました。

小林:まさにWeb3プロジェクトをずっと作ってきたと。

岡本:作ってきたチームにいた、というのが正確な話ですかね!

別荘×Web3技術で切り開く新市場

小林:続いて、NOT A HOTELという会社でどんなことをされているのか、ビジネスモデルなどについて教えていただけますか。

岡本:NOT A HOTEL株式会社がメインの事業会社で、こちらはNOT A HOTELという別荘を販売している会社です。創業者の濱渦伸次は元々宮崎県出身で、宮崎でアパレルECファッション関連のECサイトを作る会社を創業し、ZOZOグループに売却されています。

ZOZOの創業者の方が宇宙に行くことを決めた際に、新しいチャレンジをということでNOT A HOTELが創業されました。これが2020年の4月1日なので、コロナの真っ最中ですね。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:サービス内容としては別荘の提供なのですが、着目している事業開発の課題として、別荘やホテルなどは稼働率が低かったり、空室率が高かったりといった点があります。そこをどうにか解消できないかと思ったのがまず1つです。

もう一つは、代表の濱渦自身が自分の作りたい別荘を作るときに、一つじゃなくて、いくつも作りたいという思いがあったそうです。

そういった経緯から現在は、年間10日から別荘を使えるサービスを提供しています。

小林:社長が描く、理想の別荘が欲しいという思いが具現化したのですね。資金調達も結構されていますよね。

岡本:そうですね、累計でいうと220億円くらいですね。

小林:凄まじいですね...(笑)。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:作っているものがソフトウェアではなくてハードな不動産、しかも別荘なので調達金額は大きくなりますが、それでも調達できるということは、会社が強くなってきているなと感じています。

小林:ちなみに参画された2020年ごろのメンバー数は20名ぐらいとおっしゃっていましたが、現在は何名ぐらいいらっしゃるんですか。

岡本:現在は下記の4社がありますが、全部で計268名になります。

  • NOT A HOTEL株式会社:NOT A HOTELの開発・販売を行う会社
  • NOT A HOTEL MANAGEMENT:ホテル運営をする会社
  • NOT A HOTEL2nd株式会社:物件のセカンダリマーケットを作る会社
  • NOT A HOTEL DAO株式会社:「みんなでNOT A HOTELを保有し、みんなで利用できる仕組み」を提供するWeb3プロジェクト

小林:そんなに増えたんですね!その中でNFT・Web3側に関わるメンバーは何名ぐらいですか。

岡本:エンジニアもいれば、社内弁護士まで関わっていますが、プロジェクトチームは10人ちょっとぐらいで動いています。

【飲食からWeb3業界へ】驚きのキャリアチェンジとは

小林:現在、岡本さんはWeb3業界で活躍されていますが、元々は飲食業界にいらっしゃったのですよね。

岡本:そうですね、はい(笑)。

小林:そこから次は何をされたんですか?

岡本:その後に株式会社bitFlyerに転職しました。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

小林:凄いキャリアチェンジですね(笑)。その経緯を伺えますでしょうか。

岡本:飲食は、いつか自分の店を持ちたいぐらい好きで、当時も仕事に不満はなかったのですが、座って仕事をすることに憧れる時期でもあったんです。そこで偶然ビットコインを知る機会があり、「ビットコインって知ってる?」みたいなところから始まりました。

当時は本当によくわからない、怪しいビジネスなのか詐欺なのかわからないような時代でした。

小林:最初は相当怪しかったですからね(笑)

岡本:そうですね(笑)。IT知識などなかったので、「何ですか??」みたいなところから入り、ひとまず取引所の口座を開設しました。

小林:とりあえず買ってみようみたいな感じだったのですか。

岡本:はい。なけなしのお金を突っ込みました。すると、日々価格がすごい上下するので怖くて色々調べていたところ、ブロックチェーンに出会ったんです。

「ブロックチェーンはITの今後を作っていくものになるんだ。」といろんな人が言っていて、これはチャンスなんじゃないかと思ったんです。

その時は、ちょうど飲食の仕事も次のステップに行くのか、転職するのかを考えていて、ブロックチェーン業界に行きたいと思い、bitFlyerに履歴書を送りました。

小林:当時もいろいろ選択肢があったかと思うのですが、bitFlyerを選んだ理由は何だったのですか。

岡本:当時、ブロックチェーン開発を行っていた会社は、bitFlyer含め数社しかありませんでした。その時の僕はビットコインが好きで興味を持っていたので、bitFlyerに行きたいと思い採用いただいたのです。

ただ、一緒に働く先輩同僚はIT出身か金融機関出身が多い中、自分の前職はモンスーンカフェで(笑)。「店長で気合い入ってるんでしょ?やる気あるでしょ?」「はい、頑張ります!」という感じで面談をした記憶があります。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

小林:それで見事合格されたわけですから凄いですよね!

岡本:自分としては、面白半分で採用いただいたんじゃないかと思います。ですが、人生において一番重要なくらいラッキーな瞬間でした。

元々、ビットコインやアルトコインに興味があり、買ったりしていて、その後本流で働きたいとなってbitFlyerに拾っていただいたという感じですね。

NOT A HOTELが目指すWeb3戦略

小林:そんなこんながあって、NOT A HOTELに参画されたのですね。

岡本:そうですね。NOT A HOTELへの参画は、元々bitFlyerの先輩が先に入社されていて、その方が中心になってNOT A HOTELのNFTというサービスがプレスリリースで出たことも知っていました。そのタイミングでお声がけいただいたので、ぜひということで参画したのです。

小林:Web3・NFT施策に力を入れようと思われた理由は何だったのですか。

岡本:NOT A HOTELは別荘を販売している会社なので、不動産開発のスピードに事業の成長が制限されてしまいます。2022年は3期目で売り上げをしっかり作っていかなければならない時期で、物件を売るだけでなく、新規の商品を作りたいという思いがありました。

不動産を単純に小口化するという選択肢もありましたが、不動産商品は販売時に重要事項説明が必要で、原価率や人件費が変わらないのです。そこで、不動産サービスではない形でNOT A HOTELの宿泊を体験いただける会員サービスをNFTで作り上げました。それがNFTに取り組んだ理由です。

小林:あのビジュアルを見た時に、「そりゃーNFT売れるよな」ってすごい思っていました。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:NFTを販売した段階では、まだ一つ目の物件すら出来上がっていないフェーズだったんです。当時のお客様からは、試す気持ちぐらいの価格がいいなというお声をいただいていました。なので、事業者目線でのニーズとお客様が求めているニーズが、タイミングよく作れたのかなと思います。

小林:とはいえNFTで小口化して、あのレベルの別荘を手に入れやすい価格で販売したのは、NFTの非常に良い活用事例だったと思います。

岡本:そうですね、ありがとうございます。

サービス利用者の反応と課題

小林:実際にNOT A HOTEL NFTをリリースされた時、岡本さんは具体的にどんな業務をされていたんですか。

岡本:私の得意分野はカスタマーサポートやコミュニティ形成、イベントなどリアルマーケティングの部分です。一番最初に入ったタイミングはNFTを販売する前でしたので、販売オペレーションとNFTを購入いただいたお客様との関係構築、そしてNFTを送る作業などを担当していました。

小林:今もそういった業務を続けていらっしゃるんですか?

岡本:はい、行っています。直接顔を合わせたりもしていますね。

小林:そうなんですね。NOT A HOTEL NFTを買う方の特徴や想定しているペルソナ、ターゲットなどはありますか。

岡本:基本的にはNOT A HOTELの物件購入を考えている方がメインターゲットです。具体的に言うと、当時はまだ物件がなかったので、購入できる資本力はあるけれども、まずは試してから購入を検討したいという方々ですね。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:ただ、結果的にはより広範な方がターゲットとなっています。NOT A HOTELの物件を購入される方は経営者が多いのですが、NFTにしたことで、サラリーマンや20代のホテルライクな女性の方からも購入されるようになりました。

実際に、「年1回泊まれるこのサービスは人生で一番大きな買い物です」と言いながら購入された方もいます。

小林:実際に泊まった方の反応はいかがですか?

岡本:おかげさまで、宿泊体験は皆さん大満足いただいています。ただ、下記のような課題もあります。

  • スマートホーム化している点
  • チェックインがコンシェルジュなしでアプリ対応という点

岡本:NFTでの宿泊では、会員権型のカードのNFTを持つ方に鍵のNFTが届いて、それをNOT A HOTEL NFTのサイトで接続して予約するという流れがあるのですが、そこが難しいんです。

なので、1回目の宿泊については、サポートを行わなければいけないなと課題間として感じています。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

小林:一年に一度しか行わない操作だから、そもそも忘れてしまうこともありそうですよね。

岡本:そうですね、そこはもう少しシームレスにしていく必要があると感じています。

興味深いのは、NFTの事業でよく言われる流動性の問題です。一般的なNFTと違って、NOT A HOTELのメンバーシップNFTはほとんど流通していないんです。なぜかというと、皆さんが毎年の宿泊を楽しみにしていて、手放したくないと思ってくださっているからです。他のNFTサービスとは異なるKPIになっているのも、当社のNFTの特徴かなと思います。

小林:日付が確定しているから、どうしても使用できない場合は、宿泊の形でNFTを譲渡できるのですよね。

岡本:そうです。その年の宿泊権がNFTで届きまして、これは譲渡も売却も可能です。こちらはある程度の取引が発生しています。

NFT・Web3の未来と展望

小林:岡本さんから見て、NFTやWeb3の将来性についてどうお考えですか?

岡本:将来性はものすごく感じています。ありがたいことに、私たちのモデルを研究いただいて、さらに良いものが出てきていると思います。特に会員権型NFTという領域では、非常に優れたNFTの活用事例になったと自負しています。

財布に何枚もカードを入れたり、スマホに多くのアプリを入れたりするのと同じで、MetaMaskだけ、ウォレットだけで済むような世界が来るはずなので、次の展開は必ず来ると確信しています。

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:ただ、お客様からするとWeb3はまだまだわかりにくい存在です。
Web3らしさを隠すトレンドもありますが、どこかでその壁を乗り越えなければならないと思っています。一度ブレークスルーをしてしまえば、本当のWeb3ユーザーになれるんです。

実際、私たちのお客様360名のうち8割が初めてNFTを購入された方で、しかも100万円を超えるNFTを最初に購入されているんです。

小林:それは確かに凄いことですよね!

岡本:そうなんです!そこからいろんなデジタルアイテムも購入されるようになり、「このコインはどう思う?」といった質問もいただくようになっています。一つのハードルを越えると、世界が広がっていくんですね。

Web3の要素は隠しがちですが、むしろブレークスルーさせることが重要です。事業者が背中を押し続けることで、初めて発展していくと考えています。

小林:めちゃめちゃ熱いメッセージですね!

NOT A HOTEL株式会社 岡本伊津美さん インタビュー

岡本:でも実際に取り組むと、お客様に楽しんでいただけるんです。

小林:そうですね。NOT A HOTELさんが示している一歩目の形は、これからWeb3ビジネスを始める方々にとっても大きな参考になりそうです。みんなでNFTユーザーを増やしていけば、もっと早くWeb3が広まっていく世界が作れそうですね!

次回予告

前編では、NOT A HOTELの事業モデルや岡本氏自身の異色のキャリアパス、そしてNFTを活用した会員権サービスの現状について伺いました。

後編では、NOT A HOTEL DAO、そしてRWAとして日本初のIEOとなるNAC(NOT A HOTEL COIN)のプロジェクトについて詳しく語っていただきます。

Web3とリアルアセットの融合による新たな価値創造の形をご期待ください。

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▼後編の掲載をお見逃しなく!

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参照元:NFT Media

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