【日本酒×Web3による新体験】TISが描くトークン活用型ブランディングの未来とは

2024年9月24日、国内大手のシステムインテグレーターであるTIS株式会社(以下、TIS)が、「米鶴酒造の日本酒付き特別体験を販売するweb3実証実験」に関するプレスリリースを公表しました。

そこで、このプロジェクトやブロックチェーン事業について伺うべく、TISのWeb3ビジネス企画部へインタビューを行いました。今回、取材に対応していただいたのは、次のお三方です。

ソーシャルイノベーション事業部
Web3ビジネス企画部
部長 林  靖彦氏
   村上 浩文氏
   坂部 絢子氏

以下の疑問に対してお答えいただき、TISが推し進める「トークン活用型ブランディング支援サービス」について、詳しく伺いました。

  • ブロックチェーン技術の研究・開発に着手した経緯とは?
  • ブロックチェーン技術について、TISが描く事業構想とは?
  • モノのトークン化によって生み出される新たな価値とは?
  • TISが考える今後の事業展開とは?

ブロックチェーン事業への参入方法を模索している企業の方、Web3の事業構想を考えている方、ファントークンの活用に興味のある方はぜひ最後までご覧ください!

「近未来の金融インフラ」への期待からブロックチェーンの研究・開発に着手

TIS株式会社 Web3ビジネス企画部 部長 林 靖彦氏
Web3ビジネス企画部 部長 林 靖彦氏

Q. まず、TISがブロックチェーン技術に取り組み始めた経緯について、お聞かせください。

林氏:TISがブロックチェーン技術に取り組み始めたのは、2016年です。

当時はブロックチェーン技術が「近未来の金融インフラ」として注目を集めていた時期であり、決済システムに携わるTISでも研究・開発に乗り出し、社内の技術者を育成してきました。

その後の2018年頃からは、アーリーアダプターのクライアントから「ブロックチェーン技術の活用を検討したい」との要望が寄せられるようになったのです。これを受けて、TISは「Blockchain推進室」を組織し、エンタープライズ向けサービスの開発に注力し始めました。

そして、2021年頃から脚光を浴びたトレンドが「Web3」でした。このWeb3を語る上で重要なのが、「分散型ネットワーク」や「データの個人所有」といった概念です。偶然にも、TISでは「デジタル田園都市国家構想」などのITプロジェクトに携わっていたため、データの民主化などのノウハウが社内に蓄積されていたのです。

加えて、クレジットカードのプロセッシングサービスでは50%以上のシェアを誇っており、決済インフラの構築技術にも長けています。今後、暗号資産による決済が普及した際には、企業向けの会計処理やウォレットサービスが必要となるでしょう。このような場合でも、加盟店舗向けの金融インフラ構築を得意とするTISであれば、安全・安心な決済環境を提供できます。

このような理由から、既存事業によって得た知見とWeb3技術を組み合わせるべく、「Web3ビジネス企画部」を発足してユースケースの発掘に乗り出したのです。

全社横断の視点でWeb3事業へ挑む

Q. Web3ビジネス企画部の組織体制について、お聞かせください。

林氏:2024年9月時点で、Web3ビジネス企画部には約15名が在籍しています。

中途採用の社員よりもプロパー出身者が多く、大半のメンバーは社内公募によってWeb3ビジネス企画部に志願してきました。今後も人員を増やしていく計画であり、2026年頃までに30名ほどの体制を目指しています。

前身であるBlockchain推進室が発足した2016年当初は、もともと産業公共事業本部の傘下に置かれた組織でした。しかし2023年4月に組織再編が行われ、金融事業の一環としてWeb3に取り組むために金融事業本部の管轄に移管されました。

さらに2024年からは、特定の事業本部に属さず全社視点でWeb3の社会実装に挑むために、ソーシャルイノベーション事業部の管理下に移り現在に至っています。

Q. Web3ビジネス企画部における現在の取り組みについて、お聞かせください。

林氏:2024年時点において注力しているのが、「人・モノ・金」の流動性を高めるサービスの構築です。

TISは、これまで法人向けのSI(システムインテグレーション)事業に取り組んできたため、個人ユーザーとの接点がそれほどありませんでした。そこで今後は、Web3パートナーの協力を得ながら、コンシューマー向けのサービス開発に力を入れていきます。

既にリアルワールドアセット(RWA)を取引できるプラットフォームも開発しており、Web3パートナーと共にユースケースを模索している段階です。最終的には企業間のサービスを橋渡しするシステムを提供し、ひとつの大きな経済圏を創出したいと考えています。

TIS株式会社 全社横断の視点 Web3事業へ挑む
引用:TIS株式会社

Q. 特定の企業グループが運営する経済圏は、これまでにも存在していました。そのような中で、Web3ならではの特色はどのような点にあるとお考えですか。

林氏:Web3ならではの特色として、DAOのような分散型コミュニティが挙げられます。

ブロックチェーンの業界では、ファンの熱量を起点としたDAOが精力的に活動しています。とはいえ、DAOがビジネスモデルとして成立するか否かは、まだ不透明な状態です。

Web3ビジネス企画部はDAOに対して大きな可能性を感じており、ビジネスとして持続可能なファンコミュニティのあり方を模索中です。事業の観点でも成立するDAOコミュニティを実現できれば、ストーリー性の伴ったモノを流通させたりと今までにない新たな価値を創出できるでしょう。

「モノのトークン化」によって、新たな価値を創造する

TIS株式会社 村上 浩文氏
村上 浩文氏

Q. TISが手掛ける「人・モノ・金」の流動性を高めるサービスについて、概要をお聞かせください。

村上氏:TISでは、リアルワールドアセットの活用によってクライアントが持つ商品の価値向上を実現します。

日本国内において、リアルワールドアセットはセキュリティトークン(※)と同義で用いられる場合が多いです。しかし一方で、有価証券の他にも「モノのトークン化」によって価値を高められる製品もあるはずです。

例えば、少量生産の商品をトークン化して所有権の流動性を高められれば、より広範囲の消費者にもリーチできるようになるでしょう。また、健全な二次流通市場の構築など、これまでにない新たなサプライチェーンを実現できるのではないかと考えています。

このような理由から、TISではリアルワールドアセットを活用した「トークン活用型ブランディング支援サービス」を打ち出しました。

(※)セキュリティトークン・・・株式や債権など、有価証券をトークン化したもの。

Q. 「トークン活用型ブランディング支援サービス」の詳細について、お聞かせください。

村上氏:「トークン活用型ブランディング支援サービス」では、企画からブランディング戦略、トークンの流通までをTISが包括的に支援します。

商品のトークン化にあたり特に可能性を感じているキーワードが、「Made in Japan」です。日本国内には、資産性や背景価値の観点で優れた製品が数多く存在します。しかし残念なことに、物流面や情報発信の制約により、一部の人にしか製品の魅力が届いていません。

加えて、多層的なサプライチェーンが原因となり、生産者と最終消費者の繋がりが希薄になってしまっている点も課題です。

そこでTISでは、所有権トークンを介して流動性の向上に寄与し、より広範囲の消費者へと商品が届く環境作りを支援しています。

TIS株式会社 トークン活用型ブランディング支援サービス
引用:TIS「トークン活用型ブランディング支援サービス」説明資料

具体的には、下記のようにすべてのフェーズにおいてトークン化によるメリットを享受できます。

  • 企画・製造・・・予約権トークンにより早期マネタイズを実現
  • 流通・販売・・・所有権トークンの流通により広範囲の市場へリーチ
  • 引換・消費/体験・・・消費者に直送されるため、鮮度維持を実現
  • 消費後・ファン化・・・ファントークンの発行により、顧客との関係性を維持
引用:TIS「トークン活用型ブランディング支援サービス」説明資料

このように、サプライチェーン全体に新たな価値を付与できるのです。

トークンを通じて、これまでにない顧客体験を

Q. 「トークン活用型ブランディング支援サービス」について、導入事例をお聞かせください。

村上氏:これまでに、日本酒のトークン化を支援した実績があります。

埼玉県の秩父地方にある花吹山醸造所では、火入れをしない生酒のどぶろくを生産しています。このどぶろくは瓶詰めした後でも酵母が生き続けているため、冷蔵庫での保管中にも発酵が進むほど繊細です。よって、一般の小売店では取り扱いできず、醸造所の近隣のみでひっそりと販売されてきました。ただ、商品自体は賞を獲得するほどの味わいであり、大きな可能性を秘めていたのです。

そこでTISは、引換権となるトークンの発行・流通を提案しました。Web3イベントにおいて購入希望者にトークンを配布し、トークンとの引き換えによって最終消費者の自宅にどぶろくを直送できる仕組みにしたのです。これにより、鮮度と美味しさを保った状態で遠方の購入希望者の元にも届けられると実証されました。

加えて、直送専用のラベルを新たにデザインし、商品の魅力や背景知識が伝わるような設計にしています。やはり、単に引換権をトークン化しただけでは、売上の増加には繋がりません。そこで「トークン活用型ブランディング支援サービス」では、商品の秘めている価値が消費者へきちんと伝わる仕掛けを重視しました。

TIS株式会社 坂部 絢子氏
坂部 絢子氏

Q. 2024年9月24日のプレスリリースにおいて、「米鶴酒造の日本酒付き特別体験を販売するweb3実証実験」が公表されました。このプロジェクトについて、詳細をお聞かせください。

坂部氏:「米鶴酒造の日本酒付き特別体験を販売するweb3実証実験」では、トークンを介して日本酒に関する特別な体験が提供されます。

この企画では、日本酒と特別体験トークンが、2024年9月24日(火)〜11月15日(金)の期間で発売される予定です。

今回のプロジェクトは、以下3社の連携により実現しました。

  • 米鶴酒造株式会社・・・山形県高畠町の蔵元
  • 合同会社SAKEX・・・「推し酒コレクション」を運営する大阪府のスタートアップ
  • TIS株式会社

TISがトークンの発行管理を行い、SAKEXのECサイトを通じて販売されます。このトークンの役割は、イベントに参加するためのチケットです。トークンを購入すると、蔵元で企画される特別なイベントを体験できます。

まずトークン保有者の元には、米鶴酒造の日本酒が事前に1本送付されます。その上で、蔵元の所在地である山形県高畠町において、米鶴酒造の日本酒に関する体験を楽しめるのです。具体的には、体験日限定で提供される特別酒と山形県産の食材を使ったコース料理を堪能できます。加えて米鶴酒造の社長も同席するため、日本酒が持つ魅力について存分に語り合える機会となっています。

そしてイベントの終了後に配布されるのが、ファン証明トークンです。特別なデザインが施された限定アイテムであり、イベントが終わった後も米鶴酒造との繋がりを証明できます。

このように、トークンを通じてブランディング強化や新しい購買体験の提供が可能になります。

コーディネーターとして、Web3経済圏をつなげる

Q. 最後に、Web3ビジネス企画部における今後の展望をお聞かせください。

林氏:「サービス開発」と「経済圏の拡張」という両輪により、Web3事業を加速させていく計画です。

Web3の登場によって既存のビジネスモデルが一掃される訳ではなく、従来の社会システムの延長線上に新しい市場が誕生すると予想しています。今後もさまざまなサービスが実験的に登場する中で、これまでにないユースケースが確立されてくるはずです。

このような発展途上の事業領域では、限られたシェアを競合企業と奪い合うのは得策とは言えません。むしろ、ライバル企業同士が互いに切磋琢磨しながら、マーケットを拡張させていく必要があります。

今後、各企業がそれぞれ独自のWeb3サービスを構築する中で、TISではそれらを繋ぎ合わせる役目を担っていきたいと考えています。システムインテグレーターとして膨大なノウハウを蓄積してきたTISならば、この「コーディネーター」としての役割でWeb3市場に貢献できるはずです。

このように、サービス開発とWeb3経済圏の拡張という2つの側面によって、Web3ビジネス企画部は事業を成長させていきます。

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