【共創プロジェクト web3 Jamを始動】NTT Digital/博報堂キースリーにインタビュー
今回、株式会社NTT Digital(以下、NTT Digital)の取締役 遠藤英輔氏と株式会社博報堂キースリー(以下、博報堂キースリー)のCEO 重松俊範氏にインタビューを行いました。2024年5月22日に、両社は共創プロジェクト『web3 Jam』の発足を発表しました。
- 『web3 Jam』とは、どのようなプロジェクトなの?
- どのような経緯で、プロジェクトが発足したの?
- なぜ社会テーマの解決を掲げているの?
- 今後はどのような展開を考えているの?
などの疑問にお答えいただき、共創プロジェクト『web3 Jam』が秘める可能性について、詳しくお伝えしていきます。
新規事業としてブロックチェーン導入を模索している企業の方、どのようなWeb3施策を展開すれば良いかアイデアが浮かばない方、ブロックチェーンの社会実装に興味のある方はぜひ最後までご覧ください!
NTT Digitalと博報堂キースリーがプロジェクト運営をサポート
Q. 遠藤 英輔様の自己紹介をお願いします。
私は、NTT Digitalにおいて取締役 CISO及びサービス開発部 Managinf Directorを務めています。
もともとはNTTドコモのエンジニアであり、3GやLTE、5Gの研究開発に携わってきました。その後、価値の可視化・小口化・流動性を高めることができるトークナイゼーションに可能性を感じ、経済合理性の外側にあった今まで見過ごされてきたものにも価値を与え、新しい経済循環につなげていけるのではと考えていたところ、NTT Digital創設のプロジェクトで声がかかり、Web3への挑戦を決意しました。
Q. NTT Digitalの事業内容をお聞かせください。
NTTドコモグループはこれまで、電話、インターネット、モバイルのインフラをつくってきました。web3はまだまだ黎明期ですが、次の社会のインフラになる可能性を秘めていると考えています。人と人、人とモノがフラットに繋がる社会の実現のためにこれからのインフラをつくる、それがNTT Digitalの役割であり、使命だと思っています。
NTT Digitalを代表するプロダクトが、「scramberry WALLET(スクランベリーウォレット)」というデジタルウォレットです。単なる暗号資産の保管場所ではなく、デジタルアセットやID情報といった日常生活で不可欠なデータを保管する社会インフラとして機能します。既存の社会システムとの連携が可能で、誰でも容易に使いこなせる点が特徴です。
Q. 重松 俊範様の自己紹介をお願いします。
私は、博報堂キースリーのCEOです。
広告会社でのキャリアが長く、12年間に及ぶ上海での駐在経験もあります。その後は日本に帰国し、2017年頃にはメタバース事業を手掛けるスタートアップで取締役に就任しました。
ただ、2017年頃の世の中はメタバースのマスアダプションには程遠く、なかなか成果が現れませんでした。そのような状況下で、「Web3技術の定着こそがメタバース普及の前提条件なのではないか」との仮説が浮かんだのです。そして、タイミング良く博報堂キースリーに参画する機会があり、現在に至っています。
Q. 博報堂キースリーの事業内容をお聞かせください。
博報堂キースリーでは、法人クライアントが抱える課題をWeb3の技術によって解決しています。過去の実績として、カルビーやJALといった大手企業でNFT施策を実現してきました。
またこの他にも、グローバル企業を巻き込んだWeb3ハッカソンの企画・運営も手掛けています。
企業が抱える課題感をきっかけに、web3 Jamが始動
Q. web3 Jamが始動したきっかけについて、お聞かせください。
重松様:クライアントと意見を交わす中で、「1社単独による取り組みでは限界がある」と感じたことがきっかけです。
人口減少や少子高齢化により、事業規模の持続的な拡大は困難になりつつあります。2022年に実施した博報堂の大規模定点調査によると、80%に上る事業者が「事業拡大を目指す中で、手詰まり感がある」と回答しています。昨今のこのような事業環境においては、1社単独による事業戦略だけではなかなか事態を打開できません。
そこで、複数の企業が参画する「共創プロジェクト」に思い至りました。ブロックチェーンの世界では、オンチェーン上のデータを参加者が共有して活用できます。この仕組みを企業や行政の間で導入できれば、業界や組織の枠組みを越えたブレイクスルーも実現すると考えたのです。
Q. web3 Jamのプロジェクト内容について、お聞かせください。
遠藤様:web3 Jamとは、ブロックチェーンを活用した企業間の共創プロジェクトです。
複数の賛同企業とともにブロックチェーン技術の活用を検討し、社会テーマにおける共創の方法を検討します。2024年5月時点で、さまざまな業界から14社が集結しています。
Q. web3 Jam始動から現在に至るまでの取り組みについて、お聞かせください。
重松様:まず、初期の段階では35社の企業に対してセミナーやワークショップを開催し、「Web3だからこそできること」について議論を重ねました。そして、その後には14社が賛同企業として参画し、本格始動に至っています。
Q. web3 Jamならではの特徴について、お聞かせください。
遠藤様:web3 Jamの特徴は、社会テーマに対して、業界や組織の枠組みに捕らわれない新たなアプローチを目指している点です。もちろん、企業横断型のプロモーションなどビジネス拡大に向けた施策も検討していますが、利益拡大だけを目的にしている訳ではありません。web3 Jamでは企業同士の協力によって、社会テーマにおける共創に取り組んでいます。
社会テーマとして、以下の具体例が挙げられます。
- 地域のポテンシャルを掘り起こす
- 健康を「遊びながら」手に入れる
- 本当に大切なモノや人とつながる
Q. web3 Jamの運営において、NTT Digitalと博報堂キースリーがタッグを組んだ経緯について教えてください。
遠藤様:タッグを組んだきっかけは、博報堂キースリーの掲げたビジョンに私自身が深い感銘を受けたことです。
web3 Jamの構想を推し進めるにあたり、NTT Digitalではパートナー企業を探し求めていました。その過程で博報堂キースリーから提示されたコンセプト案が、「web3で、つながり、ひろがる」でした。このメッセージこそが、私にとって決定打となったのです。
web3 Jamのロゴにも表現されている通り、博報堂キースリーは企業が一点に集うことで、「企業がつながり、可能性がひろがる」というビジョンを描いていました。この考えが、「オンチェーン上のデータを活用して、あらゆるボーダーを越えていく」とのweb3 Jamの思想とまさに合致したのです。
そして、「web3で、つながる、ひろがる」というキーワードをきっかけとして両社が話し合う中で、web3 Jamの方向性が急速に定まっていきました。
Q. 「web3 Jam」という名称の由来を教えてください。
重松様:「web3 Jam」は、音楽分野におけるジャムセッションに由来します。ジャムセッションでは、ミュージシャンたちが異なる楽器を駆使してひとつの楽曲を奏でます。これと同じように、共通の社会テーマに向けて複数の企業が協力する姿をイメージしました。
企業がつながり、可能性がひろがる
Q. 「web3 Jam」では、ブロックチェーンに馴染みの薄い大手企業も参画しています。これらの会社は、どのような目的でweb3 Jamに賛同しているのでしょうか。
重松様:企業の動機としては、主に2パターンに分類できます。
まず、既にWeb3施策に取り組んでいる企業の場合、社会実装をさらに前進させたいとの狙いがあります。Web3プロジェクトの特性上、1社単独ではブロックチェーンによる恩恵を十分に受けられません。パブリックインフラとしてブロックチェーンを活用するには、他社を巻き込んだプロジェクト展開が不可欠です。このように組織横断型のWeb3プロジェクトを推し進めたい企業にとって、web3 Jamへの参画が有効な手段となっています。
次に、新規事業の観点からWeb3に興味を示している企業も加入しています。ブロックチェーンに関心を示しつつも、「自社だけでは何をすれば良いか分からない」という企業も多い印象です。このような企業がweb3 Jamへ参画した場合、企業間での議論を通じて今後のWeb3施策に関するヒントを得られます。
web3 Jamでは、NTT Digitalの技術を活用したインフラ開発やシステム連携も可能です。社会実装に向けた手厚い支援を受けられる点も、web3 Jamに参画するメリットだと言えるでしょう。
遠藤様:賛同企業の多くは、データ管理の面でもブロックチェーンに大きな期待を寄せているようです。
従来のように顧客データを自社サーバーだけで保有していては、情報がサイロ化(※)してしまい有効活用が難しくなることがあります。加えて、サードパーティCookieの規制強化やサイバー攻撃の増加などの懸念もあり、これまでのような自社サーバーのみでのデータ管理に課題を感じている企業もいます。
この他にも、B to Bの業種では企業と最終消費者の間での直接的なつながりがなく、マーケティング施策を展開できないという課題もあります。これらの問題を解決する手段として、多くの企業がブロックチェーンに可能性を見出しているのです。
もちろん、プライバシーには十分に配慮する必要があるため、どのようなデータをオンチェーン上で管理するかは、しっかりと検討していきます。
(※)サイロ化:組織や情報が孤立し、共有できていない状態のこと。
業界の垣根を越えて協力し、社会テーマにおける共創を目指す
Q. 今後も、賛同企業の数を増やしていく計画なのでしょうか。
遠藤様:はい。今後もweb3 Jamのパートナーを増やしていく予定であり、新たな賛同企業を募集中です。
web3 Jamはオープンなコミュニティを目指しているため、たとえ競合企業が既に参加している場合でも加入できます。また民間企業だけでなく、自治体や行政機関の参入も大歓迎です。
web3 Jamの規模を拡大しつつ、将来的にはweb3 Jamの加盟企業が自発的に議論を繰り広げ、様々な社会テーマに取り組む姿を目指していきます。
Q. IVS Crypto 2024 KYOTOの期間中である2024年7月4日(木)に、web3 Jamに関連したオフィシャルサイドイベント『Enterprise × web3 Meetup Jam ~web3を活用したい企業同士の交流会~』が開催されました。このイベントについて、内容をお聞かせください。
重松様:『Enterprise × web3 Meetup Jam』では、Web3で新しい取り組みをしたい人たちに向けて交流の場を提供しました。
今回の交流会でターゲットとしたのは、「Web3に関する具体的なアクションプランが思い浮かばない」と悩んでいる企業の新規事業担当者です。企業間の人脈形成を促し、Web3施策へ挑む際に相談できる知り合いを増やしてほしいとの思いから『Enterprise × web3 Meetup Jam』の開催に至りました。
『Enterprise × web3 Meetup Jam ~web3を活用したい企業同士の交流会~』
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000136141.html
Q.『web3 Jam』における今後の計画について、公開できる範囲でお聞かせください。
重松様:2024年7月以降から企業間での議論をスタートさせ、取り組むべき社会テーマを選定する計画です。その上で、2024年の秋から冬にかけて、一般のユーザーも参加できるような取り組みを企画していきます。
Q. 『web3 Jam』に興味のある⽅に対して、メッセージをお願いします。
遠藤様:ブロックチェーンの活用によって、人々の利便性が向上すると考えています。
サードパーティCookieの規制やデータ・セキュリティなど、データ保有のリスクが増加する可能性のある中で、将来的にはあらゆるデータをユーザーが主体となって、安心・安全に所有・管理できるようになると考えています。このような変化は、今後のデータマーケティングにおいても大きな影響を与えると感じています。
web3 Jamを通じて、ぜひ一緒にブロックチェーンの活用方法を模索していきましょう。
重松様:Web3は大きな可能性を秘めています。そのため、事業成長を目指す企業にとっても挑戦する価値があるはずです。
今のマーケットは飽和しつつあり、既存のビジネスに注力するだけでは事業規模を拡大するのは困難な状況です。そのような環境下において、業界や組織を横断して共通の目標に取り組めるブロックチェーン技術は、ブレイクスルーを生み出す手段として有効だと言えるでしょう。
web3 Jamへの参画によって、ブロックチェーンの知見を持つ企業との連携も可能となります。Web3に関心をお持ちの際は、ぜひお気軽にご連絡ください。
▼web3 Jamの詳細はこちら
企業がつながり、可能性がひろがる。共創プロジェクト『web3 Jam』発足
『web3 Jam』に関するプレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000136141.html
『web3 Jam』に関するお問い合わせ先:
web3 Jam事務局 mail: web3jam@ml.nttdigital.io
株式会社NTT Digital ウェブサイト:https://nttdigital.io/ja/
株式会社NTT Digital 公式X :@nttdigital_jp
株式会社博報堂キースリー ウェブサイト:https://www.key3.co.jp/
株式会社博報堂キースリー 公式X :@H_KEY3
取材・文:ダンパー長野
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