【イベントレポート】日本最大級のWeb3見本市「第5回 ブロックチェーンEXPO【春】」
2024年5月22日(水)から24日(金)までの3日間にわたり、東京ビッグサイトにて「第5回 ブロックチェーンEXPO【春】」が開催されました。このブロックチェーンEXPOは日本最大級のWeb3展示会であり、最先端のブロックチェーンサービスが披露される場です。
5回目の開催となった今回のブロックチェーンEXPOでは、スタートアップから大企業まで国内外の約60社が出展しました。会場であるビッグサイトの熱量も高く、多くの企業関係者が熱心に出展企業の商品やサービスを見学していました。本記事では、実際に足を運んできたNFT Mediaの記者が会場の様子や最新トレンドをお届けします。
日本最大級のWeb3見本市「第5回 ブロックチェーンEXPO【春】」
今回のブロックチェーンEXPOでは約60社による企業ブースの出展に加えて、Web3業界の有識者による講演会が5回も開催されていました。
- 開催日程:2024年5月22日(水)〜24日(金)
- 会場 :東京ビッグサイト(西展示棟)
- 主催 :RX Japan株式会社
- 出展企業:約60社
Web3業界の第一人者による講演会
カンファレンス会場では、Web3業界の第一人者たちによる講演会が行われていました。講演会の内容で特に印象的だったのは、「Web3事業を推し進める上で日本市場が有利である」と力説されていた点です。
自由民主党の掲げる成長戦略にもWeb3が重要なテーマとして挙げられており、アメリカやヨーロッパと比較してもWeb3に対して意欲的に取り組んでいるとのことでした。またWeb3の業界団体も政府に対する政策提言を積極的に進めており、官民一丸となってWeb3先進国を目指していくとの説明がありました。
最先端のWeb3サービスが並ぶ企業の展示ブース
展示ブースでは、多くの人が出展企業の説明に耳を傾けていました。今回のブロックチェーンEXPOは、AI・人工知能などテック技術の展示会との同時開催です。そのため、DXやIT技術に興味を持つ企業関係者が数多く来場していました。
出展者の顔ぶれもさまざまです。国内のWeb3スタートアップだけでなく、大企業や海外のWeb3プロジェクトなど幅広いジャンルの組織が展示ブースを構えていました。Web3の業界団体である日本ブロックチェーン協会の展示ブースではWeb3を国家戦略にするための取り組みが紹介されるなど、ブロックチェーン業界が一体となって市場開拓に挑んでいる様子が語られていました。
ここでは、今回の見本市で特に目立っていた3つのトピックスを紹介します。
合同会社型DAOの設立を見据えたWeb3支援サービス
ブロックチェーンEXPOの会場で注目を集めていたキーワードが、「合同会社型DAO」です。合同会社型DAOとは会社法や金融商品取引法の枠組みに沿ってDAO組織を運営できる仕組みであり、金融庁による2024年4月1日の府令改正によって実現可能になりました。世界に先駆けて制定された画期的なルールであるため、多くの出展企業が合同会社型DAOの将来性について熱く語っていました。
合同会社型DAOでは、Web3プロジェクトを法人格として運営できるようになります。つまり会社法の枠組みに沿った形で、トークンを介した共同出資や議決権トークンによる投票が可能となります。
とはいえ、健全なDAOを設計するにはトークンのインセンティブ設計などDAOならではのノウハウが欠かせません。このような知見は世間に広まっておらず、ほとんどの人にとって未知の領域となっています。
そこで今回のブロックチェーンEXPOでは、コンサルティングやシステム構築に特化したWeb3企業がDAO運営の支援サービスを展示していました。その具体例の一つが、株式会社GaiaxによるDAO設立のワンストップサービスです。DAOの企画段階から携わり、コミュニティが安定稼働するまでクライアントと伴走するという強みが紹介されていました。
株式会社Gaiax 公式ページ:https://gaiax-blockchain.com/dao-installation
このように、DAOに関連するコンサルティングやシステム開発サービスをいくつかの企業が発表していました。
分散型ID(DID)などのウォレットサービス
2つ目のトピックが、トークンの発行や保有を簡単に実現するソリューションです。
ブロックチェーンサービスを広めるための前提条件として、誰もが暗号資産ウォレットを保有している状況が求められます。しかし、MetaMaskのような暗号資産ウォレットは操作が複雑であり、マス層のユーザーにはほとんど浸透していません。このような課題を解消するサービスとして、トークンを簡単に発行・保有できるウォレットサービスが展示されていました。
出展企業からは、「これらのウォレットサービスが分散型ID(DID)の基盤になる」と説明されていました。分散型IDとは、個人の特定につながるデータや資格情報を本人がウォレット上で直接管理できる仕組みです。特定の事業者が個人情報を一元的に管理する従来のシステムと異なり、分散型IDでは企業の枠組みを越えたデータ活用も可能となります。
このようなウォレットサービスを出展していた企業の一つが、株式会社HashPortです。株式会社HashPortは、大阪・関西万博で導入予定の「EXPO 2025 デジタルウォレット」の開発にも携わっている企業です。このEXPO 2025 デジタルウォレットは万博エリアだけに留まらず大阪エリアの飲食店との連携が進められるなど、分散型IDを基盤としたマス層向けのWeb3サービスを開発しています。
株式会社HashPort 公式ページ:https://hashport.io/news/20230718
マスアダプション(大衆化)を見据えたウォレットサービスは、既に2021年頃よりいくつか登場していました。ただ今回のブロックチェーンEXPOで展示されていたサービスは外部システムとの連携機能が拡充されるなど、どれも一段と完成度が高くなっている印象です。
産業用プラットフォーム向けのブロックチェーン
最後のトピックが、ビジネス用途のブロックチェーンプラットフォームです。
ブロックチェーンの特徴は、データの耐改ざん性にあります。特に透明性を確保しつつ正確な情報を複数の組織間で共有できる点が強みです。そのため、カーボンクレジットやトレーサビリティなど、企業間における取引履歴を管理する手段としての活用が期待されています。
2024年春のブロックチェーンEXPOでは、ビジネス向けに特化したブロックチェーンプラットフォームがいくつか展示されていました。その具体例の一つが、東芝デジタルソリューションズ株式会社の「DNCWARE Blockchain+」です。この「DNCWARE Blockchain+」は情報の開示範囲を細かくコントロールできるなど、法人ユーザーならではのニーズにも対応した設計となっています。
東芝デジタルソリューションズ 株式会社 公式ページ:
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/ai-iot/blockchain.html
この他にもブランド品の診断証明やサプライチェーン管理のためのシステムなど、複数の企業がエンタープライズ向けのブロックチェーン基盤を展示していました。
おわりに
今回は、「第5回 ブロックチェーンEXPO【春】」の様子と最新トレンドをレポートしました。
世間の注目は生成AIに集まりつつあるものの、Web3業界の関係者は高い熱量で事業開発を地道に続けていると実感しました。このような活動のおかげで、マス層のユーザーにとっても扱いやすいブロックチェーンサービスが徐々に登場してきています。
次回のブロックチェーンEXPOは、2024年11月20日(水)〜22日(金)の期間で幕張メッセにおいて開催されます。Web3業界の最新トレンドを掴むうえで、次回のイベントも見逃せません。
参照元:NFT Media