「米SECがイーサリアムを証券に分類する可能性は弱まった」JPモルガンアナリストら見解=報道
ステーキングプロトコルの分散化を指摘
JPモルガンのアナリストが、米証券取引委員会(SEC)からイーサリアム(ETH)が証券(セキュリティ)に分類される可能性は弱まったとの見方を示している。ブロックチェーンメディアのザ・ブロック(The block)がアナリストのレポートを引用する形で4月4日報じた。
ニコラオス・パニギルツォグロウ(Nikolaos Panigirtzoglo)氏率いるJPモルガンのアナリストは、イーサリアムが証券分類を回避できそうな要因の一つとして、リキッドステーキングプロトコル「ライド(Lido)」の現在の状況を挙げた。
ステーキングされたイーサリアムにおける「ライド」のシェアは1年前の約3分の1から現在は約4分の1へと減少しているため、イーサリアムネットワークの集中化に関する懸念が軽減されているとアナリストは指摘している。
JPモルガンのアナリストらは昨年10月、「ライド」のようなプラットフォームは分散型ではあるが「高度な集中化を伴って」いることから、イーサリアムにリスクをもたらすと懸念していた。
しかし今回、「ライド」の市場シェアが低下したため、リスクが緩和されたとアナリストらは評価している。
イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏によれば、イーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)は現在リキッドステーキングサービスを使用したステーキングがネットワークの大部分を占めており、ソロステーキングが可能なユーザーでさえもリキッドステーキングサービスを利用しているため、中央集権化している状況があるという。
同氏は以前より、「リキッドステーキングの中央集権化リスク」について問題提起をしていた。
なお「ライド」は、ライドファイナンス(Lido Finance)が提供するリキッドステーキングプロトコル。
リキッドステーキングとは、PoSを採用するブロックチェーンにおいてステーキングを行う際に、ロックした資産と「1:1」の割合で価値が担保されているトークンを発行することで、ロックされた資産に疑似的な流動性を与えることができるようになるサービスである。
「ヒンマン文書」にも言及
またアナリストらは、SECが昨年6月に公開した「ヒンマン文書」にも触れ、暗号資産の証券としての分類を行う上で、ネットワークの非中央集権化がポイントとなると指摘した。
ヒンマン文書は、SEC企業金融部門のディレクターであったウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏が行ったスピーチをまとめた内容だ。
同文書では「イーサリアムやイーサリアムネットワーク、その分散型構造の現状を理解した上で考えてみると、現在のイーサリアムの提供・販売は証券取引ではない。いずれ、この他の十分に分散化されたネットワークやシステム上で機能するトークンやコインを、証券として規制する必要がない場合も出てくるかもしれない」と述べられている。
イーサリアムが証券に分類されるかどうかは、イーサリアム現物ETF(上場投資信託)の承認判断にもかかわってくる議題だ。
現在SECは複数の申請を延期している状況であり、多くの申請の最終期限となる5月までにイーサリアム現物ETFが承認される見通しは思わしくない状況ともいえる。
3月にはSECが複数のイーサリアム財団関連企業に対し、イーサリアム財団との取引に関する文書や財務記録の提出を求める召喚状を送っていたことが報じられた。
SECはイーサリアムブロックチェーンが2022年9月にPoSにガバナンスモデルを変更したことを理由に、イーサリアムを証券として定義しようとしているという。
ブルームバーグのアナリストであるエリック・バルチュナス(Eric Balchunas)氏はイーサリアム現物ETFが5月までに承認される可能性は70%あると比較的楽観的な見方をしていたが、3月には30%程度まで可能性を引き下げたとザ・ブロック(The Block)に明かしていた。
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参考:The Block
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参照元:ニュース – あたらしい経済