期待のイーサリアム新規格「ERC-3525」とは何か。活用事例やメリットを紹介
ERC-3525とは、2022年9月に承認されたイーサリアムの新規格です。債券や保険証券などの金融商品に適したトークンだと言われています。この新規格の特徴やどんなメリットを期待して作られたのかを紹介します。追加で活用事例を踏まえながら、使い方を確認します。
NFT新規格のERC-3525とは何か
ERC-3525は新しいトークン規格です。SFT(セミ・ファンジブル・トークン)とも呼ばれており、従来のNFT(ERC-721)やFT(ERC-20)とは異なる機能を持っています。
それぞれの規格をまとめると以下の表のとおりです。
規格 | ERC-20 | ERC-3525 | ERC-721 |
トークン | 代替性トークン(FT) | 半代替性トークン(SFT) | 非代替性トークン(NFT) |
主な用途 | 通貨 | 金融商品 | NFTアイテム |
ERC-3525のSFTは「半代替性トークン」と訳され、FTとNFTのそれぞれの特徴を持ち合わせています。FTとNFTの中間にあるイメージです。
FTのように通貨として利用されたり、NFTのように識別性を示すユニークなIDを持ったりすることが可能です。
ERC-3525規格が企画された背景、採用された理由
ERC-3525が採用された理由は、ERC-20やERC-721の課題を解決するためです。
ERC-20やERC-721の課題とは「1つのスマートコントラクトで1種類のトークンしかサポートできない」ことです。そのため新規トークンを展開するたびに、新しくスマートコントラクトを作成する必要があります。
そこでマルチトークン規格の「ERC-3525」が開発されました。ERC-3525ではスマートコントラクト1つで、複数のトークンに対応可能です。そのためより簡潔にトークンを作成できるようになりました。
ERC-1155との違い
ERC-3525の他に、ERC-1155もマルチトークン規格として有名です。
ERC-3525と同様に、ERC-1155もセミファンジブルトークンの1つですが、それぞれの違いは「柔軟性」にあります。ERC-3525の方が柔軟性が高く、応用が利きやすいです。
ERC-1155では、同一のメタデータに紐付けられたトークンはすべて同じデータです。一方でERC-3525では、同一のメタデータに紐付けられたトークンはそれぞれ異なるデータになります。
ERC-3525とERC-1155の特徴については次の見出しで詳しく解説します。
ERC-3525の技術的な特徴と金融に向いているという理由を紹介
ERC-3525が金融に向いているとされるのは、「トークンの分割・統合が容易にできる」という技術的な特徴を持っているからです。
そもそもERC-3525には「ID」「VALUE」「SLOT」の3つの構成要素があります。
- ID:唯一無二を示す「識別子」
- VALUE:トークンの持つ保証された「価値」(数量など)
- SLOT:「キー属性」(2つのNFTそれぞれがSLOTを共有していれば代替可能)
従来の規格ではそれぞれ以下のように構成されています。
- ERC-20:VALUE
- ERC-721:ID
- ERC-1155:VALUEとID
- ERC-3525:VALUEとIDとSLOT
上記のとおりERC-3525には「SLOT」が追加されているため、従来の規格より機能が充実していることがわかります。
SLOTとは「グループやチーム」をイメージすると理解しやすいかもしれません。
例えば、100円玉が2枚あったとします。
2枚それぞれを足して(統合して)200円にすることが可能です。もちろん、200円を1枚ずつに分けて(分割して)100円玉2枚に戻すことも問題ないでしょう。
これは、2枚の100円玉が日本円という「SLOT」を共有しているため可能です。
続いて以下のケースを考えてみます。
100円玉1枚と1ドル札1枚があったとします。それぞれを足し合わせても、円として、もしくはドルとして扱うことはできません。100円玉と1ドル札のもつ「SLOT」が異なるためです。
このようにSLOTを持つことで、トークンの統合や分割がかんたんにできます。
SLOT属性をもつERC-3525は、金融商品への活用が期待されています。株式の一部譲渡や土地の権利分割などさまざまな利用方法が考えられるでしょう。
またERC-3525はERC-721(ノンファンジブルトークン)を拡張したものであるため、ERC-721でできることはERC-3525ですべて実行可能です。例えば、NFTマーケットプレイスにERC-3525のトークンを出品できます。
さらにERC-20(ファンジブルトークン)の特徴も持ち合わせているため、ERC-3525はセミファンジブルトークンと呼ばれています。
ERC-3525の活用事例と使い方を解説
ERC-3525の主な活用事例は以下のとおりです。
- 株式・債権・不動産などの金融商品のNFT化
- ブロックチェーンゲームのNFTアイテム
- イベントのチケットNFT
「分割・統合」が特徴のERC-3525を活用すれば、一つのNFTを複数人で分け合ったり複数のNFTを一つにまとめたりできます。
例えば金融商品の場合、保有する株式の一部譲渡などが可能になります。不動産であれば、土地の権利を複数人で分割したり、複数人が持つ土地を一つに統合したりするような使い方もできるでしょう。
また、ブロックチェーンゲームのNFTアイテム作成時にも、ERC-3525は活用されていくことが期待されています。
例えばゲーム内アイテムを作る場合、従来であればアイテムを作るたびに対応するスマートコントラクトを作成する必要があります。しかしERC-3525であれば、1つのスマートコントラクトでさまざまなアイテムを作成可能です。
ERC-3525の活用によって、NFTのユースケース増加や市場の拡大が期待されます。
ERC-3525の今後の可能性
今回はERC-3525について解説しました。
近年ではWeb3の概念がメディアで取り上げられることも増えつつあり、注目が集まっています。本格的にWeb3時代の到来すれば、仮想通貨やNFTがこれまでと比較にならならいくらい様々な生活シーンに浸透する可能性も高いでしょう。
金融商品のNFT化に一翼を担うERC-3525規格は、利用されるケースが増えていくと期待されています。今回紹介した株式や不動産などだけでなく、NFTやDeFi市場での活躍も見込まれます。
新しい規格ERC-3525の今後の動向をチェックしておくのがおすすめです。
最後に今回紹介したそれぞれのERC規格を確認しておきましょう。
ERC-20
- FT(代替性トークン)
- 数量的なものを扱う
- ビットコインなどの仮想通貨に使われる
ERC-721
- NFT(非代替トークン)
- アイテムの唯一性を示す
- デジタルアートやゲームアイテムなどに使われる
ERC-1155
- SFT(半代替性トークン)
- 複数発行のNFTに使われる
- ゲーム内通貨・アイテムなどに使われる
ERC-3525
- SFT(半代替性トークン)
- 分割・統合できる規格
- 金融商品や土地などの活用に期待されている
参照元:NFT Media