【ERC-4907とは】NFTの貸し借りを可能にするトークン規格 ERC-4907

NFT(Non-Fungible Token)とは、「代替不可能」なデジタル資産であり、近年大きな注目を集めています。

この度暗号資産業界では、NFTのレンタル機能を有するイーサリアムプログラムが、ERC-4907と呼ばれる新規格に承認されたという発表がありました。注目されているNFTコンテンツが貸し借りできるという内容のため、具体的な内容が気になっている方も多いのではないでしょうか。

レンタル機能を有するトークン規格「ERC-4907」への理解を深めることで、暗号資産やブロックチェーン技術が、より身近に感じられます。また、ネクストSNSとして注目を集めるWeb3.0ゲームへの参入障壁も下がることでしょう。

今回は、NFTレンタルが可能なイーサリアムのトークン規格「ERC-4907」の特徴や、関連規格、活用方法などについて解説します。

既存のトークン規格

トークン規格であるERCとは、Ethereum Request fo Commentsの略称であり、イーサリアム上でのトークン開発に使用される共通規格(プログラム)です。

現在でも日々さまざまなERC規格案が世界中の開発者により思案・議論・開発されています。なかでも現段階で多くの方に認知されているERCが、以下の3つです。

  • ERC-20
  • ERC-721
  • ERC-1155

以下からは、特に認知されている上記の3タイプのERCについて解説します。

なお、これらの各種ERCは、EIP(Ethereum Improvement Proposals)と呼ばれる、イーサリアムに新たにレンタルを追加させるための改善提案規格として派生したものです。

ERCと深い関連性があるため、併せて覚えておきましょう。

ERC-20とは

ERC20とは、イーサリアム上のブロックチェーン技術によってトークンを新たに開発する際に使用される、統一規格(プログラムのようなもの)です。
2015年11月19日に、イーサリアムサービス全体の利便性を向上させて、ユーザー満足度を充実させることを目的に開発されました。

世界中の開発者が、イーサリアムを使用することで簡単に独自トークンを開発できるように改善。イーサリアムとは、分散型プラットフォームの名称であり、イーサリアム技術を活用することで専門的なプログラミング言語を使用せずに、独自トークンを発行できます。

従来であれば、ブロックチェーンを1から設計しなければ独自トークンを発行できなかったのですが、ERC20という統一規格の登場により、誰でも自由にオリジナルの独自トークンを作成できるようになったのです。

そのほか、従来であれば規格の異なるそれぞれのトークンは、1つのウォレットで管理できませんでした。しかし、ERCという統一規格を使用することで、ウォレットでの一括管理も可能になっています。

ERC-721とは

ERC721とは、NFT(非代替性トークン)を発行する際に使用される統一の規格であり、EIP-4907というトークン規格の拡張版として承認されたERCです。

ERC20のような、多数のトークンを発行できる「数量的な要素」が特徴なのに対して、ERC-721は、唯一性を備えた「固有的なトークン」という意味合いがあります。
また、現在NFTを発行する際に比較的多く使用されている規格であり、トークンの数量(Value)ではなく、固有のトークンID(Token ID)を指定して取引するものです。

ほかにも、NFTデータを構成するタイトル、デザイン、容量などの各種詳細なメタデータと呼ばれる情報を安全に管理できるのもERC-721の特徴といえます。

つまり、ERC-721は非代替性トークンであるNFTの発行に欠かせない規格であり、代替性トークンであるFT発行時に必要なERC-20から派生した規格だと覚えておきましょう。

ERC-1155とは

ERC-1155は、代替性トークンであるFT(Fungible Token)と非代替性トークンであるNFT(Non Fungible Token)の特徴を織り交ぜたハイブリット型のトークン規格です。

ERC721を開発したうちの1人であり、Enjin CoinのCTOでもあるWilliam Entriken氏によって開発されました。ERC-1155は、マルチトークンスタンダードという別名で表現されることもあり、GameFiなどのメタバースを起用したWab3.0ゲームでの実用性を考慮して開発されたものです。

従来の規格では、ERC-20やERC-721などの別規格同士を同時に転送する際には、イーサリアム取引を実行する際の手数料であるガス代が高くなる傾向にありました。
そこで、別規格同士のERCをまとめて送受信したり、各種取引などのトランザクション費用を抑える目的で誕生したのがERC-1155です。

ERC-1155の登場により、例えば、別規格で制作されたNFTキャラクターとNFTアイテムを同時取引しても、ガス代を低く抑えることに成功。

これまで、別々のERC規格を取引する際には高額なガス代が問題視されてきましたが、複数種類のトークンを低コストで取引できるようになり、ユーザー満足度は向上しました。

新たなトークン規格「ERC-4907」とは 

ERC-4907とは、現在、世界中で大きな注目となっているNFTコンテンツを、レンタルできるイーサリアム改善案EIP-4907が新たに承認された規格です。

イーサリアム改善案EIP-4907は、NFTマーケットプレイスであるDoubleProtocol(ダブルプロトコル)が提案・開発した規格です。NFT制作時に欠かせないERC-721規格から派生したものであり、この度、NFTレンタル機能を備える新規格「ERC-4907」として承認されました。

以下では、NFTの貸し借り機能を有するERC-4907に関する内容を紹介します。

概要

ERC-4907は、NFTのレンタルが可能な機能を有するイーサリアム改善案EIP-4907の新しいトークン規格として承認されたものです。

EIPとは、Ethereum Improvement Proposalsの略称であり、イーサリアムにレンタル機能という新たな機能を追加させるための改善提案として開発されました。

ERC-4907は、NFTに一部の保有権限の付与と使用時間を設定する機能を追加したことでレンタルを可能にしています。保有権限の設定と保有期間の設定が新規追加されたことで、NFTレンタル者は詳細なユーザー所有設定が行えないため、転売などの不正が基本的にはできません。

NFTの貸し出し者は、レンタル期間中に利用者に転売される心配がないため、安心してNFTレンタルサービスを提供できるのです。

活用方法

NFTでは保有者を特定する唯一性を備えたアドレスを所有できる仕組みが、大きなメリットとして着目されてきました。今回、NFTがレンタルできるようになったことで、クローズドなコミュニティやイベントへの参加権限を一時的に付与または受納できるようになったのです。

クローズドなコミュニティへの参加が可能になれば、例えば高額NFTコレクションが揃う環境で富裕層とコミュニケーションが取れるようになります。また、限定イベントを開催するNFTでは、所有権限をレンタルすることで誰でも参加できるようになるでしょう。

Web3.0時代では、メタバースやNFTなどが今以上に浸透していくことも予想されるため、GameFiでのアイテム強化にも利用できます。今後、今以上に暗号資産やNFT、メタバースなどが現実世界に実装されることで、さらにNFTレンタルサービスの活用幅も広がっていくことでしょう。

活用事例

NFTのレンタル機能を有するイーサリアム改善案EIP-4907が、新トークン規格ERC-4907として承認されたことで、無担保型NFTレンタルサービスも誕生しました。

無担保NFTレンタルサービスを開始したのは、東京港区に本社を構えるシンシズモ株式会社であり、「Rilascio(リラシオ)」というサービスを提供する予定です。すでにプレスリリースでも公表されており、現段階でもさらなる実装に向けて進んでいます。

Rilascioが現在検討しているNFTレンタルサービスは、主に以下の2つです。

  • 新規発行されるNFTコレクションは、規格統一などのラップを行わないオリジナル状態で貸付
  • 既存NFTコレクションは、異なる規格トークンに相互性を持たせるWrapped Token(ラップドトークン)に変換したNFTを貸付

Rilascioは、今後の本格的な実用化に向けて、NFTコレクションやマーケットプレイス、ブロックチェーンゲームの関連各所へのパートナーシップを呼びかけている状況です。

そのほか、大規模なNFTコミュニティへの活用が予想されるものに、「BAYC」や「ドルチェ&ガッバーナ」。国内では「Ninja DAO」などの有名なNFTコミュニティへの参加に際して活用されることも予想できます。

今後、各種NFTコミュニティに対しても、徐々にNFTレンタルサービスの活用事例が広がっていくことでしょう。

まとめ:ERC-4907はNFTレンタルサービスとして注目されているトークン規格

ERC-4907は、イーサリアムにレンタルサービス機能を持たせるために開発された改善案EIP-4907が新たに承認された規格です。

各種NFTアイテムに、ユーザーが所有できる権限範囲を指定する機能や、所有期間を設定できる機能を追加したことで安全に貸し借りサービスを行えるようになりました。NFTの所有権限を限定的に留めることにより、転売リスクを抑えたり所有期間を設定したり、双方が安心して利用できるサービスです。

人気NFTコミュニティや限定NFTイベントへ一時的に参加するほかに、GameFiなどのブロックチェーンゲームのアイテム強化の際に活用できます。

今後の実用化に向けて、現在NFT業界で注目されているサービスの1つなので、NFTレンタルが本格始動した際には、ぜひ今回の内容を参考に活用してみてはいかがでしょうか。

参照元:NFT Media

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