DeFi(分散型金融)利用者なら知っておきたい「MEV」とは?

DeFi(分散型金融)利用者なら知っておきたい「MEV」とは?

マネーレゴと呼ばれる金融機能のモジュール、そしてその組み合わせから生まれるユースケースの多様性が今日のDeFi(分散型金融)の成長を支えてきた主な理由の一つであることは間違いありません。一方でこのマネーレゴを基本に構成された一連のエコシステムは、その成長ととも複雑化してきており一般的なDeFi利用者には見えにくい仕組みも多く存在します。今回はその一つである「MEV」について解説します。

DeFi利用者が意識すべきMEV

「MEV」とは、「Maximal Extractable Value」の略称であり、生成中のブロック内取引の再注文などから抽出できる価値を指します。抽象的で分かりづらいかと思うので、以下簡単な例でMEVとは何か、なぜDeFi利用者は意識しておく必要があるのかを説明します。

例えば、ユニスワップ(Uniswap)のようなAMM(自動マーケットメーカー)で大きな取引を行うと対象のプール内バランスが崩れます。つまりAMMでの取引価格と市場価格が大きくズレてしまうということです。このような裁定機会はよくあることで、それを見つけたタイミングで利益を得るためにアービトラージを実行しようとするのは自然な考え方です。ただし、想定していたような価格で取引が実行されず、ただ高い取引手数料を支払うのみで裁定取引の機会を失ってしまうことはDeFi領域では珍しいことではありません。このような取引の裏側で何が起きているのかをもう少し詳しく見ていきましょう。

例えばAさんが、先の裁定機会を見つけたタイミングで80Gweiのガスプライスで取引実行するためにネットワークに通知したとします。この取引がそのままネットワークに受け入れられるとAさんは取引を実行することができます。しかし、この取引がペンディングされている状況で、裁定機会を探しているボットがこの機会に気づき80Gweiよりも高い120Gweiのガスプライスで取引を再送信して、実質的に先に取引を実行してしまうことができます。

つまり、ボットが先に取引を実行してしまうのでAMMのプールは元のバランスに戻り、その後のタイミングでペンディングしていたAさんの取引が実行されてしまいます。結果としてAさんはただ高く買ったのみで、想定していた裁定機会も失ってしまったということです。この場合はフロントランニングという形でMEVが用いられた例です。

MEVに関連する問題と解決のためのプロジェクト

現在のイーサリアムでは、マイナーが取引の順序やブロックへのトランザクション取り込みに関する最終的な決定権を持っているため、このようなゲームではマイナーこそが最も強力なプレーヤーと見なすことができます。そのためMEVのMをMaximalではなくMinerと表現する場合もあります。

ただしマイナーだけはなく、トランザクションのオーダーに責任を持つ当事者がいるブロックチェーンやレイヤーには必ず似たようなプレイヤーは存在しますのでマイナーがいないチェーンでも類似した取引は発生します。

flashbots image
出典:https://explore.flashbots.net/

MEVはDeFiが流行しはじめた2020年から急激に増加しており、執筆時点の2021年5月時点で累計MEVは5億6,280万ドルに達しています。またMEVは例示したような裁定取引で利用されるのが主ですが、清算取引など「取引順序が重要」となる取引の場で意識されます。

MEVはスマートコントラクトの知識がないと理解できないような複雑な価値なので、一般的なトレーダーがこのようなDeFiの背後にある複雑さを理解するのは困難ではあり、それ故に不利な取引をしてしまっていることに気づかない場合もあります。MEVに関連する問題はそれがネットワークのルールであるため不正ではありませんが、この問題を放置しておくと後に大きな問題に繋がる可能性も指摘されており、いくつかのプロジェクトがこの問題に対処しようとしています。

例えば「Flashbots」は、MEVという価値をエンジニアではない一般的な人でも捉えられるようにするツールを提供し、DeFi領域における知識により発生する情報の非対称性問題に取り組んでいるプロジェクトです。

その他、裁定取引や清算取引で十分なリソースを持たない個人の集合体でMEVの問題に対処しようとする「KeeperDAO」や取引情報を秘匿化して敵対的なフロントランニングを防ぐ「Secret Swap」のようなプロジェクトが立ち上がってきています。

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参照元:CoinChoice

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