CBDCのパブリックテストが加速、企業サービスも登場
恐らく2021年は、CBDC(中央銀行発行のデジタル通貨)のパブリックテストが加速、CBDCを前提にした企業サービスが登場するはずです。本コラムでは2021年のCBDCに関わる大きなトレンド予想を紹介します。
世界の中央銀行はなぜCBDCを研究開発するのか
2020年末時点で、世界の主要な中央銀行のほとんどがCBDCの開発を推し進めています。BIS ( 国際決済銀行)が発表した調査報告書によると、世界の80%の中央銀行が、CBDCに関して少なくともなにかしらの調査は行っていることが示されています。以前にHashHub Researchで発刊したレポートでは、各中央銀行のCBDC開発の動機の7つのポイントとして以下を述べました。
- 中央銀行マネーへのアクセスを維持するため
- 現金にはレジリエンスがある
- 決済の多様性を維持、または向上させるため
- 金融包摂の促進
- クロスボーダー決済
- 公共におけるプライバシー(または匿名性について)の調整
- 財政政策と金融政策の効率化、および選択肢の増加
CBDCのパブリックテストが加速
各中央銀行の中でも先進的な存在となっているのが中国人民銀行です。中国人民銀行は、すでに中国国内の各地域でCBDCのパブリックテストを行っています。下記はTwitterに投稿されたユーザーインターフェイスです。
1) A DCEP wallet application from a test that included the Agricultural Bank of China was inadvertently published. It’s important as it’s the first time we’ve seen pictures of the working DCEP wallet application, which is rumored to have a targeted late 2020 release date. pic.twitter.com/fRyi6BEZSl
— Matthew Graham (@mattysino) April 15, 2020
2020年年末の時点で、パブリックテストにおける中国のデジタル人民元を使用したユーザーは数十万人程度ですが、2021年はこのパブリックテストの規模が数百万人、あるいは数千万人といった規模になるでしょう。
そして恐らくこの程度の規模になってくると、デジタル人民元に最適化された金融サービスや企業戦略などが見え始めてくるはずです。CBDCは企業サービスにも影響を与えます。
企業もCBDCに対応する必要性
例えば、中国のデジタル人民元では最も影響を受けるのはアントグループのAlipayやテンセントのWechat Payです。Alipayでは買い物などの支払いに使う際、支払い側は手数料不要ですが、売り手(お金の受け取り側)は約1%の手数料がかかります。2020年に予定されていたアントグループのIPOは直前で中止になりましたが、上場目論見書で2020年上半期の数字を見ると、収益の3分の1がこの決済手数料によるものです。( 参照)
しかし中国のデジタル人民元は手数料ゼロが公言されており、AlipayやWechatはもちろん、各民間銀行アプリにデジタル人民元ウォレットを搭載することができ、アプリ間を横断する決済ネットワークです。つまり決済サービスとしてのAlipayなどの役割を大きく奪うサービスでもあります。
この観点に立てばアントグループなどの決済事業者、あるいはより広範囲の金融事業者はCBDCを大前提にして事業戦略を刷新する必要性を既に感じていることは間違いありません。そして少しずつ具体化するのが2021年であり、それはCBDCが社会に溶け込み始めるのに必要な民間企業の動きであるとも言えます。
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参照元:CoinChoice