暗号資産・株式トークン投資アプリ「Abra(アブラ)」に罰金命令:米SEC・CFTC
米国の証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)は2020年7月13日に、暗号資産(仮想通貨)やトークン化された株式に投資することができるアプリ「Abra(アブラ)」の運営会社とその関連企業である「Plutus Technologies Philippines Corp.」に対して、合計30万ドル(約3,200万円)の罰金を科したことを発表しました。
こちらから読む:三菱UFJ、デジタル通貨2020年下期発行へ「暗号資産」関連ニュース
「トークン化された株式の販売」も違法と判断
Abra(アブラ)は「暗号資産」や「トークン化された株式」に投資することができる仮想通貨ウォレットアプリであり、”200種類以上の暗号資産を保管できるだけでなく、ビットコインを使用して「Apple・Amazon・Google・Facebook」などといった有名企業の株式トークンに投資することもできるアプリ”として世界的に注目を集めていました。
同社のサービスは株式に直接投資するものではなく「対象となる株式の価値に連動したトークンを発行し、それらのトークンに投資することができるサービス」となっていましたが、米国証券取引委員会は『これらの契約は米国証券法の対象になる』と説明しています。
具体的には「Abra」とフィリピンの提携企業である「Plutus Technologies」が、正式な法的登録を行わずに米国の個人投資家に有価証券のデリバティブ商品を提供していたことや、ライセンスを持つ取引所で取引を行なっていなかったことなどが問題視されています。
Abraの「サービス運営方法」に対する指摘も
米国証券取引委員会(SEC)は今回の発表の中で『Abraは2019年2月に米国を含めた全世界のユーザー向けにサービス提供を開始したが、アプリをダウンロードしたユーザーが証券法で定義されている”適格な契約参加者”であるかどうかを判断するための措置を講じていなかった』と指摘しています。
Abraは2019年にSECのスタッフと対話を行った後に「米国ユーザーへのサービス提供を制限する」などの対策を講じ、特定の事業を米国外へと移動していましたが、SECは『カリフォルニアの従業員が取引契約の設計・販売を行い、ユーザーの適格審査や承認作業を行なっていた』と指摘しており、『Abraの米国を拠点とする従業員が契約をヘッジするために米国で何千もの株式とETFの購入に影響を与えたことがわかった』とも説明されています。
これらの内容について、SECの合成金融商品部門責任者であるDaniel Michael(ダニエル・マイケル)氏は『証券関連のサービスを提供している企業が米国でビジネスの基幹部分を担っている場合、米国以外の個人投資家と取引を行い、外国法人を設立するだけでは連邦証券法を回避することはできない』と説明しています。
米国証券取引委員会の発表によると、「Abra」と「Plutus Technologies」は今回の摘発内容について承認も否認もせずに「中止命令」と「それぞれ15万ドル(約1,600万円)ずつの罰金支払い命令」に同意したとされています。これに伴い、米国商品先物取引委員会(CFTC)も両社との和解を発表したと説明されています。