■2017年年初来の円高局面が転換された! マクロン氏がフランス大統領に当選した。「ホワイトスワン」だから相場に織り込み済みと見なすが、ドルインデックスの安値保ち合いから考えると、米ドル全体の底打ちといった判断は、なお早計な気がする。しかし、2017年年初来の円高局面から再度円安局面へ転換されたことは確かだ。
昨年(2016年)の英EU(欧州連合)離脱決定、また、米大統領選の結果が「ブラックスワン」だったから、市場はかなり警戒していただけに、先々週(4月24日~)からどうやら「ホワイトスワン」なのでは…とマーケットが気づき始めると、ユーロの上昇が著しかった。
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過度なリスクオフに対する修正が始まったわけだから、このところの円買いが一転して円売りと化し、米ドル/円の上昇につながったわけだ。
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米ドル安・円安共存の局面では、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のパフォーマンスが必然的に一番良くなる。ユーロ/円の高値更新は象徴的な出来事だ。
4月17日(月)安値115.75円から、昨年(2016年)高値124.09円のブレイクまで、ユーロ/円は、ほぼスピード調整なしで上昇し、V字反騰を果たした。
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2016年高値更新には至っていないものの、英ポンド/円も同じ構造を示し、米ドル/円の反騰と相まって、急速な円売りが進んでいることは明白である。
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米ドル/円の108円台底値の維持、また113円節目の打診はユーロ/円、英ポンド/円のパフォーマンスに比べれば地味に見えるものの、総じて底打ちのサインとして重視されるべきであろう。
■ここからは米ドル全体とユーロ/米ドルの値動きが焦点 ここからの焦点は、やはり、米ドル全体の動向にあり、また、ユーロ/米ドルの値動きにあるだろう。
ユーロ/米ドルにしても、ユーロ/円にしても、「フランスブラックスワン」の懸念や朝鮮有事などの地政学リスクによってもたらされたリスクオフに対する修正と言うなら、一直線な値動き自体にも目先「オーバーボート」の疑いが浮上し、これが米ドル全体の底打ちにつながる可能性がある。
■ユーロ高・米ドル安の地合いは続かないだろう もっとも、先週末(5月5日)の米雇用統計の堅調もあって、米6月利上げの確率はほぼ100%であり、金融政策の違いによって、ユーロ高・米ドル安の地合いは続かない公算が高い。
足元のユーロ高が、行きすぎた懸念に対する修正という位置づけなら、通過したからこそ「事実の売り」になりやすい。さらに、マクロン氏の当選がEUの政治リスクをすべてなくしたわけではないから、楽観しすぎるのも禁物だ。
ただし、フランスから「ブラックスワン」が飛ばなかったことで、ECB(欧州中央銀行)がこれから徐々に政策の正常化を図る余裕を得られたとみなされ、これが中長期的にはユーロの支えになると思われる。
この意味では、近々ユーロ高に対する修正は見られると思うが、ベア(下落)トレンドへ復帰するには何らかの材料が必要だと思う。
現時点では、あくまでユーロのスピード調整、といった視点で臨んだほうがよさそうだ。換言すれば、近々ドルインデックスの底打ちがあっても、ブル(上昇)基調に復帰するのは、利上げ以外の材料なしでは容易ではない。
米ドル高基調を確認する、また加速させる材料として…