仮想通貨「国内取引所間でも送金できない可能性」トラベルルール対応で複雑化
暗号資産取引所でトラベルルールへの対応が進められていることによって、日本国内の暗号資産取引所では「国内取引所間であったとしても仮想通貨を直接送金できない場合がある」といった問題が出てきています。
トラベルルールとは?
トラベルルールとは「利用者の依頼を受けて暗号資産の出金を行う暗号資産交換業者は、出金依頼人と受取人に関する一定の事項を、出金先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールのことを指します。
2023年6月9日までには「犯罪による収益の移転防止に関する法律」などが改正されるため、日本の暗号資産交換業者は”トラベルルールへの対応”を進めており、数年前に比べると暗号資産の送金が複雑になってきています。
このルールによって暗号資産交換業者はユーザーに「受取人の各種情報・送付先の国や郵便番号・受取人との関係性・送付目的」などの情報提出を求めているため、一般ユーザーは送金時にこれらの情報を提出する必要があります。
トラベルルールの詳細はこちら
国内取引所間でも暗号資産が送金できなくなる?
トラベルルールは「海外取引所に仮想通貨を送金できなくなる可能性がある」という点で注目を集めていましたが、現在は「日本国内の暗号資産取引所間でも仮想通貨を直接送金できないケースがある」という点でさらに注目を集めています。
これは「日本国内の暗号資産交換業者が異なる送金通知システムを採用していること」や「法令等で定められた通知を正確に行えない可能性があること」などが原因で、現在は”異なる通知システムを採用している国内取引所間では仮想通貨の直接送金ができない”という問題が実際に発生しています。
暗号資産取引所が導入している通知システムには「TRUST」や「SYGNA」などの種類があるため、国内取引所はここ最近の発表で『自社と同様の通知システムを導入していない取引所には仮想通貨の直接送付ができなくなる』との説明を行なっています。
【TRUSTを導入している国内取引所】
・bitFlyer(ビットフライヤー)
・Coincheck(コインチェック)
【SYGNAを導入している国内取引所】
・bitbank(ビットバンク)
・BTCBOX(ビーティーシーボックス)
・CoinBest(コインベスト)
・DMM Bitcoin(DMMビットコイン)
・GMOコイン
・BitTrade(ビットトレード)
・LINE BITMAX(ラインビットマックス)
・Rakuten Wallet(楽天ウォレット)
・SBI VC Trade(SBI VCトレード)
・Tokyo Hash(東京ハッシュ)
一部の国内取引所からは公式発表も
「一部の暗号資産交換業者には暗号資産を直接送金できない」ということは、一部の暗号資産取引所からも公式発表されており、SYGNAを採用しているビットバンクは「ビットフライヤー・コインチェック・クリプトガレージには仮想通貨を送金できない」ということを発表しています。
なお、ビットバンクの公式発表では「暗号資産が直接送付できなくなる暗号資産交換業者は今後変更される可能性がある」とも説明されています。
また、TRUSTを採用しているコインチェックは「トラベルルール対応開始日以降は、TRUSTを導入しているサービスやプライベートウォレットなどにしか暗号資産を送金できなくなる」との発表を行なっており、送金可能な国内取引所としては「ビットフライヤー」のみを挙げています。
記事執筆時点では「送金可能な暗号資産交換業者」を公式発表している取引所は限られているものの、今後は同様の発表が各社から行われていくことなると予想されます。
「仮想通貨の利便性を損なう」と批判する声も
暗号資産交換業者の対応範囲拡大が実施されれば、送金できなかった取引所などにも送金できるようになる可能性がありますが、しばらくの間は「一部の取引所間では暗号資産を直接送金できない」という状況が続く可能性があるため注意が必要です。
なお、取引所に直接送金ができない場合は「MetaMask(メタマスク)」などの自己管理型ウォレットに一度仮想通貨を送金してから、再度送金する方法が有効です(※送金手数料が2重にかかるのが難点)。
日本国内ではこのような状況に対して「”世界に向けて低コスト・迅速・自由に送金できる”という仮想通貨の利点を大きく損なっている」といった指摘の声も多く出ており、状況の改善を求める声なども出ています。
国内取引所の強みを比較